今どきの子は安定感に欠ける、「フォロー」すれば安心感を得て本来の力を発揮するようになる
私は真面目に教室に「お笑い」を取り入れようとがんばってきました。そして、分かったことがあります。それは「お笑い」と教育がとってもよく似ているということです。
「お笑い」も教育も、「フリ、オチ、フォロー」から成ります。
教育の「フリ」は、発問や指示、「オチ」は、子どもたちの取り組みの様子、「フォロー」は、教師が子どもたちを評価し、ほめる、叱るなどの対応です。
私は、発問や指示、面白ネタやしかけ、などの「フリ」については、これまでにも一生懸命に勉強し、工夫してきました。しかし、子どもたちを「フォロー」することについては意識すらしていなかったのです。
今どきの子どもたちは「安定感」に欠けています。これからの子どもたちを動かすのは「フォロー」だと私は確信しています。
「フォロー」で子どもたちに「安心感」を与えれば、子どもたちが持っている本来の力を十分に発揮させることができると思うのです。
子どもたちを「フォロー」するための基本的な考え方は
(1)「子どもを見る目」を鍛えることが必要
子どもたちを「フォロー」するためには、子どもの様子を見ることが欠かせない。
気が散ると目が散る。姿勢が崩れると背中が曲がる。落ち着きを失うと手が動く。足が動き出せば立ち上がる。このように「フォロー」するためには、まず、子どもを見る方法をたくさん知っていることが必要である。
その子の気持ちを察する、雰囲気を察する力がなければ、今どきの子どもたちには対応できない。
(2)「フォロー」の基本は「ほめる」こと
教師の一番の仕事は「ほめる」ことである。何を言っても先生が必ず認め、ほめてくれると、子どもたちは「安心」して何事にも取り組めるはずだ。
教師は、ほめることが苦手な人が多いようだ。どうしても口先だけのほめ方になってしまう。実は私もそうである。
そこで意識しているのが「驚く」という「フォロー」である。
例えば、計算問題10題をやり終えて、持ってきたとき「えっ、もうできたの! 早すぎ!」と驚いてみせる。驚いてみせると、わざとらしくならない。
結果だけでなく、発想や過程をほめるのもいい。驚くという「フォロー」は、おすすめである。
(3)間違った答えのときは、救ってあげて「フォロー」する
子どもが間違った答えを言ったときは「素晴らしい間違いだね。みんなの勉強になるなあ。おかげで、みんな賢くなった。すばらしい間違いをしてくれた○○さんに拍手!」と、救う方法もある。
また「こういう間違いする子、可愛くて先生は好きだなあ」と、救う方法もある。
ほめることができない場合は「救う」ことが必要である。教師は一生懸命やった子を絶対に見捨ててはならない。
(4)ハードルを下げ「安心感」を与える「フォロー」を
今どきの子どもたちは「失敗したら嫌だなあ」「失敗して笑われないかなあ」と不安を持っている。だから、答えが見え見えのクイズに喜んで取り組む。間違える心配がないから「安心」してできるのだろう。
ハードルを下げ「安心感」を与える「フォロー」が必要である。子どもたちは「安心」して自分の力を発揮できる。
(5)叱ることも大切な「フォロー」
「フォロー」というと、何か「甘い」というイメージがある。しかし「フォロー」は甘いだけではない。
ほめるだけで学級が成り立つなら、こんな楽な仕事はない。学級を成り立たせるなら「厳しく叱る」という「フォロー」は欠かせない。
例えば、掃除。私は掃除を真面目にやらない子は厳しく叱る。ほめるだけで、真面目にやらない子が、掃除をするようにならない。
特に若い教師は叱り方がゆるい。叱るときには「作戦」も必要だが「ダメなものは、ダメ!」と全身全霊を込めて叱りつけることが大切である。
(6)ほめるために叱る
叱ることは大切である。しかし、叱りっぱなしにしないほうがいい。やはりほめることが欠かせない。
例えば、算数の授業で、Nくんがかけ算のやり方を全く聞いていなかった。問題を黒板に書き、Nくんを黒板の前にこさせる。問題を解くことができない。
「どうしたの?説明したばっかりでしょ?」「子どもだから失敗は仕方ない。けど、絶対にくり返すなよ! 成長しなさい」
授業の最後に練習問題を数問させ、Nくんは解けている。そこで、Nくんを前に出し、問題を解かせる。
「正解! 素晴らしい! できるようになった、成長したね、Nくんに拍手!」
こんな「フォロー」を続けると、子どもたちは真剣に授業に取り組むようになる。要は叱りっぱなしにしないということだ。
感情的に叱るのは素人だ。「ほめるために叱る」という作戦を持って叱りたい。
(中村健一:1970年山口県生まれ、山口県岩国市立小学校教師。授業づくりネットワーク、お笑い教師同盟などに所属)
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