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普通の学校では学習できない問題児を再生する教師はどのような人か

 私は米国のネヴァダ州でも最低と呼ばれる高校で「日本文化」の講師を勤めた。モラルのかけらもない生徒と接しながら、米国社会のひずみを見た。
 生徒たちが常識を身につけていないのは「しつけ」てくれる大人がいないからだ。生徒たちは崩壊した家庭に育ち、貧困にあえいでいた。親が不法労働者であったり、刑務所に入っていたり、ドラッグに溺れていたりしていた。
 私なりに全力で生徒たちと向き合ったが、限られた時間では手に負えず、諦めた生徒もいた。私が教室を去った後、受け持った生徒たちのほとんどが高校を中退していた。
 その後、私は問題児と呼ばれる小学生を、大人が支えるボランティア活動に参加した。活動の一環として、普通の学校では学習できない、問題を起こした子どもを預かる特別な学校を訪ねた。
 この学校では特別授業をする。30日から45日ごとにサイクルを決め、段階に応じた「しつけ」を施す。「通常の生活が可能」と判断された子どもは、それぞれ市内の別の学校で再スタートする。
 小学部の責任者のテイラー・ハーパーは
「この学校に送られてくる子どもの98%は家庭が崩壊しています。それも、かなり深刻な状態で」と彼女は言った。
 彼女の部屋には、教室が見える特殊ミラーがある。彼女は教室の最後部席に座る5年生くらいの男の子を凝視した。彼は身体を左右に揺らし、何かの曲を口ずさんでいる。動きが激しくなり、机を叩きながらラップを歌い始めた。
 彼女は彼の元へ走り、話かけた。
「随分、ご機嫌ね。どうしたの?」「えっ、ああ」
「今、何をする時間か知っているわよね」「あ、うん」 
「じゃあ、決められたことをやりましょうよ」
 彼が戸惑った顔をすると、ハーパーは
「ちょっと、校庭を一周しようか?」
と、彼をうながし、教室の外へ連れ出した。
「今日はいい天気ね。さぁ、大きく深呼吸をして!」
と、ハーパーは大きな声で呼びかけ、彼と一緒に小走りで校舎の周りを駆け始めた。
 この学校には、いじめを受けて、いじめっ子に銃口を向けた子(我慢の限界を超えて、お祖父さんの机から拳銃を持ち出したのだ)。水道がない、使えなくなったトレーラー車で生活している子。同性愛者に犯されてしまった子。など、絶望的な生活環境のなかで生きている子どもたちである。
 子どもたちが置かれた現状を聞かされると、悲惨な生活環境で気持ちが暗くなる。しかし、教室からはネガティブな空気は感じられない。その理由は教師であるハーパーがエネルギッシュでバイタリティに満ちているからである。
 ハーパーは「子どもを再生させるカギは、常に子どもをポジティブな気持ちにさせてあげること。だから、私がはつらつとした姿をみせることだ」と、述べています。
 ハーパーは大学を卒業し教師になった時、荒れた小学校を希望した。9年間務めた小学校では、9割以上の保護者がトレーラー車内で生活し、ドラッグに溺れていた。だから、小学生でドラッグを覚えてしまう。
 
「私が自分に約束したのは、絶対に子どもたちから逃げないということ。それから、どんな子どもにも同じように接することを心がけています」とハーパー言う。 
 ハーパーが勤務する学校の代表のフリーマン(他の高校の校長を8年間務めた経験がある)
「私はタフですよ。自分の限界に挑むつもりで仕事をこなしています。絶対にあきらめたりしません」
「子どもたち一人ひとりの特色を見きわめて、最善の方法を探すことこそ教育者の務めだと思う。ハートとハートで付き合っていくことが第一です。信頼関係を築くことがカギです」
と述べています。
 二人に共通するのは、陽気さとみなぎるエネルギーである。
(
林 壮一:1969年埼玉県生まれ、プロボクサーを断念し、週刊誌記者を経てノンフィクションライター。渡米し弱者の目線から米国の問題児の姿を追い続けた)

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