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どうすれば「いじめ」による自殺などの悲劇を防ぐことができるのか

 親にとって、わが子が学校で「いじめにあっていないだろうか」という心配は尽きません。いじめを苦にした生徒の自殺が報じられると、その不安はますます強くなります。
 ある「いじめ自殺事件」を通して、その防止方法を考えてみたいと思います。
 Kくんは、中学一年に隣の県から引っ越してきました。同じクラスにヤンチャなMくんがいました。最初はMくんから、からかわれているだけでした。やがて、殴る蹴るの暴行や、背中をシャープペンで突かれるなどの悪質ないじめに発展していったのです。
 いったん「いじめられっ子」の烙印を押されると、別のクラスの生徒からもいじめの標的になりやすいものです。こうして泥沼に陥っていきました。
 やがて三年生になると、不良グループのSくんが絡んでくるようになりました。SとMくんは、口実を設けてKくんにお金の支払いを要求します。次第にエスカレートして数万円単位となりました。
 Kくんは、ただ手をこまねいていたわけではありません。一年生の春と秋、先生に苦境を訴え、相談していたのです。
 ところが先生は、親身になって相談に乗るだけの心の余裕も時間もなかったようでした。先生は、いじめの当事者を呼んで、双方に「仲良くしなさい」と言い聞かせるだけで終わってしまいました。
 このようなやり方は全く効果はなく、いじめが一層激しくなり、Kくんは先生への不信感を植えつける結果となりました。
 本来なら、双方から詳しく事情を聞き、真相を解明したうえで「Mくんが悪い」と、はっきり注意・指導ができればよかったのでしょう。
 三年生になって、カツ上げが繰り返される頃には、もはやKくんの頭から、先生に相談する思いは消えていました。
 Kくんは、自分がいじめられていることを、親にも言っていませんでした。「親に心配をかけて、つらい思いをさせるのはいやだ」「親に相談したからといって解決できるはずがない」という思いがあったのでしょう。
 こうしてKくんは、誰にも相談できないまま行き詰まって、遺書にいじめや恐喝を告発する言葉を記して死を選んだのです。中学三年の冬のことでした。
 Kくんの自殺は、周囲に衝撃を与えました。学校は教職員が一丸となって自殺の原因となったいじめの有無を調査するとともに、再発防止のため、対策チームを発足させました。
 また、遺書で名指しされたM、Sくんについては、警察の捜査がなされ、容疑を認めたため、恐喝罪で逮捕されました。その後、二人は少年院送りとなっています。
 一方、Kくんの親は自殺に追い込まれた真相を知りたいと、弁護士と相談のうえ、加害者の少年とその親、いじめを放置した学校の設置者の市をも相手として民事裁判を提起しました。
 その結果、いじめに加担したメンバーはもちろん、その親と市についても責任が認められ勝訴判決が下りたのです。
 このようないじめは、いじめるほうも、面白半分でやっていることが多く、いわば遊びの延長と思われます。そんな彼らには、刑法に触れる悪い行為をしている、という自覚がない場合がほとんどです。
 だからこそ、弁護士に依頼して、いじめは、恐喝罪、傷害罪などの犯罪行為であることを、きちんと教える警告書を出すべきだと思います。これによって、まず、カツ上げ行為は阻止できます。
 弁護士に依頼すると、かえって仕返しを招き、事態を悪化させるのではないか、と危惧する人もあるでしょう。
 しかし、弁護士が入って、これは犯罪であると諭すならば、その忠告を無視して、犯行をエスカレートさせるほどのタチの悪い生徒は、それほど多くはありません。親身になって言えば伝わるものです。
 しかし、実際には、悲劇的な結果が出てから、というケースがほとんどです。もっと弁護士が身近な存在になれたら、どれだけの悲劇を未然に防止できるかもしれない、と思わずにおれません。
 弁護士の利用価値を分かってもらえたら、これ以上の喜びはありません。
(
浮田美穂:1976年大阪府生まれ、弁護士。2児の母)

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