授業がうまくいかない原因とは、どうすれば優れた授業になるか
教材研究も十分にした。資料も準備した。しかし、授業がうまくいかない。子どもが食いつかないということがある。
おかしいなあと思い、よく考えてみると、子どもの能力にマッチした教材が提示されていないことが原因と考えられる場合がある。
教師が興味にまかせて調べた、むずかしい内容を、そのまま子どもにぶつけていることである。
子どもの実態を把握した上での教材のかみくだきが不足しているように思う。
「こんな考えをしている、このくらいの能力の子どもに、こんな教材をぶつけたら、子どもがこんな追究をして、考えがこうなった」というような研究を積み重ねていかないと、一般性のある研究になっていかないのではないだろうか。
「教材は、子どものためにある」といわれる。しかし、子どものどんな点に対して教材があるか問われていないのではないかと思う。
教材を選定するとき「子どものどんな点に対して、教材のどういう内容が、どのように有効か」
ということを考えておき、これを仮説として授業に取り組むことが必要ではないだろうか。
教材研究をするとき「具体的にターゲットの子どもを思いうかべて、この子に、この教材をぶつけたら、どんな反応を示すか」と考えながら行うのである。そうすれば、教材を取り上げた理由もはっきりする。
授業においても、当然その子に注目し、その子むきの発問をすることになり、ものすごく具体化する。
これがズバリ当たれば、子どものとらえ方や教材の選定に自信がもてるようになる。うまくいかなければ、どこがおかしいか反省材料になる。
反省も具体的にでき、次への発展材料となる。このようなことを重ねていくことによって、教材の程度やおもしろさがつかめると同時に、子どもを見る目ができていく。
私はたくさんの授業を見続けてきました。優れた授業に共通するポイントと思われることは
(1)授業がうまい教師は、一番やりたいことや、教材をこのように提示すれば子どもたちが熱中するということを念頭において、その展開にふさわしい目標を考えて指導案を書いている。そうすれば、かたい目標にとらわれることはなくなり、おもしろい授業ができるようになる。
(2)優れた授業は、教材の内容が鮮明でおもしろい。身近にあって誰でも気づきそうな、おもしろい情報を集め、ユニークな資料にまとめている。身近なことから広い世界が見えるものが教材としてよいのである。
(3)優れた授業の発問や指示には、子どもがよく反応し、多様なおもしろい考えを出している。
(4)授業のうまい教師は子どもの見とりがうまく対応がみごとである。対応の技術は教師の総合的な腕で、授業の善し悪しがこれできまるほど大切なものである。
(5)板書は授業のねらい・内容・方法と教師の学力や人間性が表れる。板書のうまい教師は構造的でわかりやすく、子どもが書けるスピードでゆったりと書き、文字もきれいで、色も使い分け、絵や線を入れたりして工夫している。
(6)優れた授業をする教師は、いつも笑顔で表情がやわらかい。子どもたちを包み込む雰囲気をもっている。話し方がうまく、子どもたちを引きつけている。ここぞというときに、おもしろいパフォーマンスをして子どもたちが喜ぶ。
(有田和正:1935-2014年、福岡教育大学附属小倉小学校、筑波大学付属小学校,愛知教育大学教授、東北福祉大学教授、同特任教授を歴任した。教材づくりを中心とした授業づくりを研究し、数百の教材を開発、授業の名人といわれた)
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