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保護者が担任の説明も聞かず「いじめる子を転校させよ」と教育委員会に訴えた

 中学三年のJくんの母親から「うちの子が不登校になりそうです。学校でTくんがいじめることが原因です」と担任に電話がありました。
 私は、母親から連絡があったので、本人に事情を聞き、指導もし、その後もできるだけ注意し、見守ってきました。
 その後、Jくんが登校を渋るようになったので、母親がわが子に聞と
「学校でTくんとその仲間にいじめられている。くつを隠されたり『デブ』とはやしたてられたり、仲間はいずれにされている」
「Tくんに、ドッジボールで故意に強く当てられ、やめてほしいと頼んでも聞いてくれない。昨日は掃除のときに、一人で雑巾がけをさせられた。Tくんのいる学校には行きたくない」
と母親に言った。
 このことを母親は担任に電話で伝え、さらに
「前にも、先生に『いじめるTくんらを何とかして』とお願いしたのに、何もしてくれませんでした。いじめるTくんを転校させてください」
と言った。
 私は
「お母さんが言われるほどのいじめはありません。私も気をつけていますし、Tくんらにも指導しています。Jくんに対しては彼らにも言い分があるようで、転校の必要はないと思いますが」
とお話ししましたが、母親は
「わかりました。学校がそういう姿勢ならば、これから教育委員会へ訴えにいきます。いいですね」
 私は
「いや、まだ話し中ですし『いいですね』と言われても、私の一存ではきめられません」
 母親は
「とにかく教育委員会へ行きます」
と、電話で話し合うことができませんでした。
 その後、教育委員会から
「実態が親の訴え通りとは思わないが、このような訴えが出ること自体が、対応のまずさを感じさせる」
という主旨の連絡が校長宛てにあり、私は校長の指導を受けました。
 親がわが子の話を聞いただけで、他の子を批判し、非難し、私の説明も聞かずに教育委員会に訴えられては、今後の指導に自信を失くしそうです。
 さて、このような場合はどのように対応すればよかったのでしょうか。
 最初に母親から連絡があったときに
「よく調べて必要な指導をしますが、変わらないようでしたら、またお知らせください。Jくんにも、そのようにお伝えください。ありがとうございました」
といった対応をし、その後の電話のときは、
「いじめはない、彼らにも言い分がある、転校の必要はない」
などとは口にせず、
「わたしも注意していたつもりですが、電話ではよく伝わりませんので、直接お会いしてお話していただけませんか」
と、冷却時間と事実調査のための時間を確保してから、母親と話し合えばよかったのではないかと思います。
(
諏訪耕一編集:1937年愛知県生まれ、元愛知県公立中学校教師。長野県に不登校の子どもの回復施設「浪合こころの相談室」を開設した)

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