反抗的な子どもと信頼関係を築くには「マンツーマン」の指導が有効である
私が五年生を担任したとき、Aくんは、素直に話を聞かず、「嫌」「やりたくない」「なんで、そんなことせなアカンねん」「ありえへん」などと言って、反抗的な態度をとり続けた。
Aくんは、おそらく、これまで周囲の教師や子どもたちから、心ない言動をされてきた経験から、傷つきたくない、攻撃されたくない気持ちが人一倍強く、見えない「よろい」を着て自分をガードしているように見えた。
私は、Aくんの「よろい」を脱がせることが肝心だと考え「マンツーマン」で指導しフォローすることにした。
AくんがBくんに暴言を吐き、暴力をふるった。「マンツーマン」で指導した。すると、マンツーマンになったことで、Aくんは正直に話すことができて、反省もするようになった。
私が「偉いやんかぁ。自分のやったことを認めたし、反省もできてるやんか」と言うと、黙ってうなずいた。
次の日、クラスでトラブルが二つあった。Aくんとは別の子どもたちのトラブルの指導に予想以上に時間がかかって、AくんとCくんのケンカの指導はその日にできなかった。
次の日に私は「マンツーマン」の指導をするためにAくんを呼んだ。
「昨日、Cくんとケンカしたやろ。なんでケンカしたか、覚えてるか?」と、私が聞くと、Aくんは「あまり覚えていません」と、言った。
そのとき、私はしまったと思った。その日のうちに話をしておくべきだったのである。時間がなくても「マンツーマン」の指導は、その日のうちにすべきである。話すタイミングがずれると、出来事の詳細を忘れたり、記憶があいまいになるからである。
五月の初めに「先生、Aくんが教室で暴れています」と、子どもが知らせにきた。
私は、教室に入るなり、大声で
「誰が何しとんやぁー、暴れている者、廊下へ出ろっ!」
と叫んだ。教室がシーンとなったところで、学級の子どもたちには、これから行う課題を指示して廊下に出た。
AくんとDくんが廊下に立っていた。聞いてみると、Dくんが遊びのルールを無視したことに腹を立て、Aくんが暴れたようだ。
教室内で暴れることは、どんなことがあっても、みんなに迷惑がかかるから許されないことを二人に話した。
Dくんには、ルール違反について厳しく指導した。
Aくんには、暴れた行為の自己反省をさせた。すると私に
「みんなに迷惑をかけて、すまなかったと思う」
と言って、うなだれながら入室し、みんなに詫びた。
休み時間に、私はそっとAくんに「話がある」と告げ、ひっそりとした放送室に呼んで「マンツーマン」なり、
「さっきは、みんなの前で頭を下げて、偉かったなあ。カッコよかったぞ!」
「よう言うたなぁ! 迷惑かけたことを反省できるって、成長している証やで」
と私は言った。
私が教室に戻ったとき、学級の子どもたちに
「今、さっきのケンカのことでAくんと先生は二人で話をしていました」
と説明した。
Aくんが不在を心配する子どもたちを安心させるためと、子どもたち同士で悪い噂を防ぐためである。
「マンツーマン」で対応すれば、子どもは周りの目を気にすることなく、じっくり話ができる。
日々の生活の中で、教師は意図的に、自然な雰囲気で「マンツーマン」の場面を作っていくとよい。そうすれば、教師は子どもとの信頼関係をきっちりと築くことができる。素敵な学級を創っていくための大切な技術なのである。
(中條佳記:奈良県公立小学校教諭。教育サークル「MY KOHAN」奈良事務局、教室を笑いであふれさせる「お笑い教師同盟」所属し、教員間のネットワークづくりに努めている。関西を中心に教員向けセミナーを主催する傍ら、自らも講演者として壇上に立つ)
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