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溺愛型・放任型・過干渉型保護者によりクレームは異なる、どう対応すればよいか

 子どもを持つ家庭の役割は、ひとつは社会人として自立した人間になるよう育て「しつけ」ること。もうひとつは、家で心身を休め、活動のエネルギーを補給する「癒し」です。
 この二つの役割が、家庭で十分に果たされないと、子どもの問題行動につながります。
 家庭の養育態度とクレームの特徴はつぎのように分類されます。
1 溺愛型の保護者
 子どもに温かく接し、癒しはあるのですが、しつけが甘くなってしまうと、わがままな振る舞いをすることが多い子に育ってしまいます。
 子どもに、何をしてもいいんだという気持ちがあると、欲求が疎害されるとすぐに「キレる」、自己中心的な言動にはしりがちです。
 このタイプの親のクレームは、わが子かわいさのゆえ、自分の子どものことだけを考え、無理難題を押し通そうとします。
 例えば「運動会で、うちの子が1位だったのに2位にさせられた。校長に1位にするように教育委員会から言ってください」というように、子どもかわいさゆえのものです。
 その点さえしっかり押さえておけば、問題はこじれることはほとんどありません。「親心の受容に始まり、親心の受容に終わる」これがポイントです。
「お母さんの気持ち、よくわかりますよ。お子さんも悲しかったのでしょうね」と、母親の気持ちを受け入れたうえで、子どもの気持ちに焦点を当てます。
「お母さんの要求で事態が変わったら、お子さんはどう感じるでしょうか?」
「もちろん喜びますよ」ときたら、
「そのことで、まわりの子に迷惑がかかることを考えても、喜ぶでしょうか」
「私には、お母さんがそういう子に育てているとは思えないのですが」
と、二の矢を放ちます。
 このタイプの親に対しては、十分に耳を傾けて聴き、溺愛の弊害について具体的な場面で、機を見て助言するようにしたいものです。
2 放任型の保護者
 しつけがなされていない状態です。子どもは温かな言葉がけやスキンシップを受けていないために「うれしい、楽しい、かわいそう」などの感情がはぐくまれていないことが多い。
 子どもを「ほったらかし」放任している親が、子どものことでクレームをつける場合は、
(1)
放任の姿勢を責められそうになったとき
(2)
放任の姿勢を責められことを避けるために、子どものことを思う親を演じるとき
に分けられます。
 ふだんは子どもをかまってやれていない分、教師へのクレームを通して、その埋め合わせをするかのように、子どもを守る親の役割を果そうとするのです。
 子どもは愛情深い親のようにふるまわれて混乱するばかりです。
 このような親に対するには、教師の側にも強靭な精神力が求められます。
3 過干渉の保護者
 親の思いや考えを子どもに押しつけます。親の厳しい「しつけ」で、子どもは「よい子」を演じるか、チックなどの心身症を表すか、思春期になって家庭内暴力や非行といった暴発を起こすか、大きく三つに分けられます。
 クレーム対応に最も苦慮するタイプです。親が強い思いや考え方をもっているためです。
 その邪魔をする人はみな敵です。そのため攻撃し降伏させようとするのです。
 このクレームに対するには、相当な労力が必要となります。教師が心身ともに疲れ果てるのは、この型のクレーム対応といってもよいくらいです。
4 バランス型の保護者
 ふだんは子どもに温かく接しながらも、子どもの間違った言動に対しては厳しく対応します。母性と父性がある、絶妙な接しかたです。
 生活習慣のしつけは、子どもの言い分に耳を傾けながらも「ダメなことはダメ」と筋を通すことが大切です。
 このような育てられ方をした子どもは、自ら考えて判断し、結果に責任をもてる人間に成長していきます。
 このような姿勢の親は、他の人に対しても同じように接するので、理不尽なクレームは生まれません。
 理想的な子育てをしているわけですから、養育態度に起因するクレームもほとんど問題になることはありません。
 ただし、養育態度とは関係なく生じるクレームも多々ありますから、クレーム問題と無関係と断定するわけにはいきません。
 クレームを防ぐには、保護者から教師への不信感が生じないよう努める必要があります。日頃から教師が教育活動に熱心に取り組むとともに、子どもと教師の人間関係、子どもたちの人間関係の深化に努めることが大切です。
 保護者からのクレームを未然に防いだり、クレーム対応を円滑に進めるためには、日頃から教師と保護者の連携・共働が欠かせません。
 たとえ理不尽なクレームであっても「保護者と教師はパートナーである」との教師の姿勢に揺るぎがあってはなりません。
 クレームを受けたときの初期対応、基本的姿勢、具体的対処法などについての知識や技能が求められます。
 なによりも大切なことは「わが子のために、こんなにも一生懸命になってくれている」と、保護者が思い抱いてくれるよう、子どもの指導に全力を尽くすことが大切です。
(
嶋﨑政男:1951年生まれ、東京都立中学校教師・教育研究所指導主事・中学校長等を経て神田外語大学客員教授)

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