保護者との対応に悩む教師へのアドバイス
保護者との関係に悩んでいる小学校の先生に私が、まず最初にアドバイスすることは「親は簡単に変わりません。あきらめましょう」ということです。
親はもう長年生きているんだし、すべての子どもの親が教育に熱心であるという教師の思い込みのほうが間違っている。まずは「あきらめましょう」という前提で対応するのです。
そうしないと、熱心な先生であればあるほど、親を何とか変えようとする。でも、変わってくれない。「なぜ私がこんなにカリカリしているんだろう」と感じてしまう。
そうすると、無力感や徒労感を感じてイヤになってしまう。その子に関わるのもイヤになる。そうすると、その子に関わることを放棄してしまうことがある。
だから
「親のことはあきらめて、まず目の前の子どもが勝負ですよ」
「子どもたちに何ができるかに視点を変えていきましょう」
と、申し上げるんです。
二番目は、多くの先生がやってしまうことなんですけど、クレームをつけてくる親に[正論で対応しようとする]ことです。
親はキレてしまいます。親がキレると教師もキレる。そうすると悪循環のまま。
つまり、正しいことを言うかどうかは親との間でそんなに大切じゃないんです。まず「関係づくり」に徹しましょう。よく話を聞きましょうと。
うなずいて、この先生は私の味方なんだなあ、というふうに感じてもらうことが先決です。
三つめは、デパートの苦情処理を参考にするとよい。デパートては、苦情を言ってきたお客さんは最高のお得意様になる可能性がある人だと。だから「もてなせ」と言っているそうなんです。
確かにクレームを言ってくる親は、まだ子どもや学校に関心があるわけで、話を聞いたうえで
「ありがとうございます」と感謝して
「本当にお子さんのことを一生懸命考えてくださっているのがよくわかりました」
「私たちは、そのために何ができますか」
というふうにもっていくと、もしかしたら、学校のための戦力になってくれるかもしれない。
だから、私はよくこう言います。正論で勝負しようとするやり方は空手である。力対力で勝負する空手である。
カウンセリングマインドというのは相手が責めてきたら、その相手の力を積極的に利用する合気道の精神なんですよと。
そういう精神は親との対応でも必要なのかな、と思うことがあります。
(諸富祥彦:1963年福岡県生まれ、 明治大学文学部教授。「現場教師の作戦参謀」として、抽象的ではない実際に役立つアドバイスを先生方に与えている。悩める教師を支える会代表)
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