気になる子どもやその保護者と、じょうずに付き合うには、どうすればよいのでしょうか
問題行動の多い気になる子どもと、その保護者のことで頭を悩ませている先生も多いのではないでしょうか。
教師はどのように関係を築いていくか、ということが重要になってきます。
教師には、様々な能力が求められます。その中でも、授業力と保護者対応能力、この二つは重要な能力です。
管理職にとっては、良い授業をする教師が望ましいが、保護者対応能力が高い教師の方が安心できる教師です。
教師が保護者の信頼を勝ち取るには、家庭訪問や個別懇談会、日頃のやりとりの能力が強く求められます。
今の教師は高い保護者対応能力が要求されるのです。気になる子どもやその保護者と、じょうずに付き合うには、どうすればよいのでしょうか。
1 初めて親に連絡するのは、良いことから
私は、気になる子を担任した時、じっとその子を観察します。その子が良いことをしたら
「きみは、いいところがあるなぁ」
「今日、家に帰ったら、必ずうちの人に、先生にほめてもらったことを言うんだよ」
と言います。そして、その日の夜、保護者に電話します。
「今日、○○くんは学校で、こんないいことをしました。ちょっとうれしくて、思わず電話をしてしまいました」
「えっ! まだ言ってないのですか? 今日、うちに帰ったら話をするように言ったのですけど」
すると、ほとんどの保護者は「え~、本当ですか? そんないいことをしたのですか?」と、うれしそうに答えてくれます。
いわゆる問題行動の多い子の保護者は学校からの電話は悪い話と身構えます。
しかし、今度の担任は「うちの子のいいところを、見ていてくれる」という思いを持つことになります。大きな効果があるのです。
2 その子だけが、ほめられる行為をしたときは、おもいっきりほめる
問題行動の多い子が、一人だけで、よいことをしたとき、みんなの前で、おもいっきりほめます。
すぐに行動が変わるわけではありませんが、少しずつ変わっていきます。それまで荒れていた子が、落ち着いていくのです。
私の気持ちが子どもたちの心に届いているような気がするのです。
よいことをした時にはほめ、悪いことをしたきは叱る、という基本的な態度は絶対に変えません。ひいきをしない、色めがねで見ない教師として、信用してくれるのだろうと思います。
3 子どもが問題行動を起こした時、子どもの口から親に報告させる
私は、まず、その子の口から親に報告させるようにしています。なぜか?
親がわが子から直接話を聞くことによって「自分の子どもが悪い」という覚悟ができるからです。
しかし、ほとんどの教師は、子どもに問題行動があった時は、直接、親に説明します。
すると「うちの子が、本当に悪いのか?」と、親は子ども呼んで真偽を聞きます。
子どもは親の迫力にたじろいで「いや、ぼくだけじゃない」「そんなことしてない」と否定する子どもいます。
親はわが子がかわいいですから「悪いのはうちの子じゃない」とわが子の擁護に回り、教師に不満を言ってくる親もいます。
こうなると、関係者を集めて、責任を明確にしなければならない。解決に時間がかかってしまうのです。それを避けるためです。
4 問題を早く解決するために、すぐに家庭訪問する
問題行動を起こしたとき、子どもは親が怖いですから、自分の都合の悪いことは話しません。そんな時は、親は教師に不満を向けてくるものです。
私は保護者から電話がかかってきた時、どうも私が聞いていたことと違う、自分の都合の悪いことは話していないな、と判断したら「お母さん、電話で言っていても何ですから、今から行きます」と、すぐに家庭訪問します。
そこでじっくりと話を聞くのです。家庭訪問する利点は
(1)電話では教師に言えることでも、面と向かうと言いにくくなる。
(2)子どもに面と向かって「今日、先生が聞いていた話と違うな」と言うと正直に答える。
(3)次の日に延ばすと、記憶があいまいになり、事実が不明確になる。
(4)家族が一緒だと、わりと冷静な判断をしてもらえる。
(5)家庭訪問されることが嫌な親は、教師にすぐにこられると困るので、少しのことでは電話してこなくなる。
5 問題行動の多い子に「いつも、おればっかり叱られる」と思わせない
教師が子どもと接するときは、成績のよい、おとなしい子には評価が甘くなりがちで、問題行動の多い子には、同じことをしても厳しくなりがちです。
例えば、問題行動の多いAくんが授業中に隣の子と話をしていたら「こら! A、また話をして、授業を聞いていないな」といった叱り方になりがちです。
そうすると、Aくんは、自分だけ注意されたことに不満をもち、不信感にもつながりかねません。
私は、このような場合、話をしている子どもたち全員を注意します。「いつも、おればっかり叱られる」と思わせないことが大切なのです。
(楠木 宏:1956年生まれ、三重県公立小学校教頭。教育研究三重県集会理科部会助言者)
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