荒れたクラスは問題が次々と起こる、どのように指導すればよいのでしょうか
クラスが荒れだすと問題が次々と起こり、いったい何から手をつけたらいいのかわからなくなってしまいます。こんなときには最低限、必要なことを確実に行うことが大切です。
クラスの荒れは、学級生活への不満が募って起こります。子どもたちは「叱られてばかりしている」「がんばろうとしても、誰も認めてくれない」「いつ、いじめられるかわからない」など、所属感、意欲が低下し、強いストレスと不安感に包まれています。
子どもは自分が認められない思いが続くと、ストレスを爆発させ「攻撃」という形で自分の存在を確かめようとします。
だから、友だちが傷つくような罵声をあびせたり、気の弱そうな友だちに暴力をふるったりして、優越感を味わい、安定しようとするのです。
暴力的な子に対しては「緊急の対応」と「ある程度、時間をかけた面接」が必要です。
クラスが荒れていると、パニックを起こす度合いは多くなり、その状況も壮絶なものになります。
机や椅子を蹴散らす、物を投げる、みさかいなく殴りかかるなど、担任一人では対処できないことがあります。
学年や担任外の教師と協力体制をとり、緊急時に対応してもらいます。子どもがパニックを起こしたら即座に安全を確保する状況をつくります。子どもたちの身の安全を優先することがねらいです。
暴力を振るう子は、それだけストレスがたまっていることを理解してあげなければなりません。
パニックがおさまり、少し落ち着いたところを見計らって「あんなになるくらい、よほどのことがあったんでしょ」と、わかってあげようとするメッセージを伝えます。
はじめは、理由なんて話せません。そもそも「どうして、むしゃくしゃしているのか」自分で意識化できないことが多く、余計にストレスを感じているのです。そして、そのストレスを暴れていることで解消してしまっているのだと考えられます。
ですから、カーッとしたとき、別の行動をとるよう提案します。例えば「カーッとしたら2回深呼吸をしてみよう」と話します。
パニックを起こさなかった日は、帰りに「今日は落ち着いていたね。深呼吸したのかな。先生、安心したよ」と担任のうれしい感情を伝えます。
クラスが荒れている状況では、子どもたちがみんな傷ついています。傷つけ合って生活している子どもたちは、静かな安心できる場、何でも受けとめてくれる、あたたかい人を求めています。
いじめられそうな子、不登校になりかけている子、クラスに居場所がないと感じている子などに「今日はどうだった?」「今、一番不安なことは何?」と問いかけ、
「いつも心配している」「大切なんだ」というメッセージを伝えるようにします。
はじめは、担任が一対一で話を聞くようにします。すぐに具体的な対応を示さなくても、ただ聞いてあげる、つらさをわかってあげる、ということが大切です。
多くの子どもたちは「学校は勉強するところ」だと認識しているし、心の底では勉強ができなくて不安だと感じているのです。
学校教育で最も大切な「わかる喜び」「できる喜び」を子どもたちに感じさせることが重要です。
しかし、クラスが荒れると、通常の授業はできない状態になります。クラス全体に指示を出しても聞かず、話し合うこともできない。
そこで、個別の学習を多く取り入れるようにします。学習プリントなどの作業をさせるのです。
はじめは、プリントを破り捨てる子も出てくるでしょう。騒いでばかりで作業しない子もいることでしょう。
ここでのポイントは、少々うるさいことは、とがめず、もくもくと作業を進めさせることです。
うるさくても学習に取り組むことに慣れさせる、いわゆる行動療法です。子どもと教師の一対一の個別指導を粘り強く進めていき、
「この問題は難しいのによくできているね」「こんな計算法もあるよ」と、一人ひとりにささやくように声をかけます。
そうすることで、子どもたちは「先生は自分だけに、ていねいに教えてくれている」と感じ、安心できるようになるのです。
一斉指導しようとすると、細かいことまで説教をしたくなりがちですが、一対一だと、一人ひとりのがんばりを認めやすく、その子のよさも新たに発見しやすくなります。
学習したプリントは、教師が丸をたくさん付け、一人ひとりのファイルに閉じておくのが効果的です。全員が見えるところに貼り出すのは抵抗を感じる子がいるでしょうから、あくまでも個人ごとの保管にします。
こうやって形に残すことで、子どもたちに充実感を与えると同時に、子どもたち同様に、不安でいっぱいの教師自身が指導した足跡になるのです。
(藤村一夫:岩手県公立小学校教師を経て校長。学級経営スーパーバイザー、上級教育カウンセラー、学校心理士。河村茂雄に師事し、学級崩壊・不登校などを予防する学級経営を研究、日本カウンセリング学会学校カウンセリング松原記念賞受賞)
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