実は能力がないと「子どもが好き」な教師にはなれない
いい先生についてアンケート調査すれば、どの調査の回答もほぼ似通っている。
小中高生は「授業が分かりやすい」「親しみやすい」「公平性」などを。
保護者は「教育への熱意がある」「子どもに愛情を持つ」「授業が分かりやすい」
などをいつも上位にあげている。
教師に望まれる資質として「子どもが好きなこと」がよく言われます。ところがよく見ていると、気の合う子どもは好きでも、そうでない子はそれほど好きではないのです。
肌が合わず、手がかかりすぎる子どもが苦手という、深くて固定的な資質が教師にはあります。
クラスのなかの数人は聞き分けのない子、肌の合わない子がいるはずです。そうした子どものことは、つい除外して、残りの大部分の子どもを念頭に置いて「子どもが好きだ」と言ってしまいがちです。
問題は無意識に除外されがちな子どもたちに、担任はどう接するかということです。教師の資質の真価が問われるのは、実にその点にこそあるのではないでしょうか。
「たとえ肌が合わないと感じる子でも、意思疎通をはかって、その子を理解しようとする」ためには、子ども理解のための知識と技術を必要とする。
たとえば、その子どもの発達段階の特徴は何か、その子の背景にどのような家庭や地域があるか、などは子ども理解の基本的知識であり、そうした知識を得ながら指導に生かすことのできる技術である。
子どもと向き合うときの、そうした知識や技術は教師の能力に属する。
「子どもを好きになりなさい」と言っても、子ども理解の知識や技術を能力として身につけることは可能である。
その能力は毎日の経験や日頃の研修を通じて磨かれていくだろう。
つまり「子どもが好き」であることは、教師の人間性としての資質だけに根ざすのではなく、能力がないと実は「子どもが好き」な教師にはなれないのだ。
逆に言えば、能力を高めることによって、肌が合わずに手がかかり過ぎると感じる子どもも、徐々に好きになっていくのである。
(今津孝次郎:1946年生まれ、名古屋大学教授・附属中高校長を経て名古屋大学名誉教授。専門は教育社会学、学校臨床社会学、発達社会学)
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