教師が「子どもたちを立派な人間に育てる」という高い意識を持ち続けることが難しくなった
教師が高い意識を持ち続けられるかどうかは、外的要因が大きく影響する。
外的要因が何かといえば、それは子どもたちや保護者からの「信頼」である。信頼され、尊敬されていれば、教師も高い意識を持ち続けられる。
しかし、あまり高くないのが現実であるようだ。
英国の教育慈善団体「バーキーGEMS財団」が小中学校教師に対する信頼度などを数値化した「世界教員地位指数」が世界21カ国中、日本は17位だった、と朝日新聞(電子版)が2013年に報じている。
かつて、教職は「聖職」と呼ばれたりしていた。そこには信頼と尊敬の気持ちが込められていた。ところが、最近は、教師を特別な存在として認めるような人はめずらしい。
それどころか、ますます「モンスターペアレント」と呼ばれる保護者が増加している。子どもをちょっときつい言葉で叱ったりしようものなら「オレの子を虐待している」と怒鳴り込んでくる。
教師が土下座して謝るまで許さない保護者もいると、小学校の教師に聞いたことがある。それくらい「モンスターペアレント」はめずらしい存在ではなくなった。
そういう親はわが子に教師の悪口をいいたい放題だから、子どもも教師を軽んじることになり、教師は信頼や尊敬など、ほど遠い存在でしかない。
現在は、教師が威張ったりすれば「モンスターペアレント」のターゲットにされかねないし、子どもに無視されるに決まっている。
こういう関係では、教師に高い意識を持ち続けろ、というほうが無理というものである。
若い教師であれば、もともと高い意識で教師になったのだから、情熱を持って現実に立ち向かえるかもしれない。
それが、勤続年数が長くなり、このような現実を長く経験してくると、情熱もしぼんでくる。
「子どもたちを立派な人間に育てる重要な役割を担っている」といった高い意識を維持できなくなるのも当然だ。
信頼もされない、尊敬もされない環境が、教師たちの意識を低下させて、教師を続けていく意欲も減退させる一因となっている。
(前屋 毅:1954年鹿児島県生まれ。「週刊ポスト」の経済ライターを経て、フリージャーナリストに。教育、経済、政治、社会問題などをテーマに執筆を展開している)
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