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教師は子どもや保護者との対人関係能力が重要となっている、どのようにすればよいか

 教師の仕事は子どもとの関係はもちろん、保護者との関係を抜きにして考えることはできない。
 最近は、子どもや保護者との信頼関係の構築が課題となっている。そうした点からすれば、人間関係の視点を正面にすえて教師の仕事をとらえ直す必要がある。
 全国の学校で目立ってきているのが保護者による教師へのクレームである。なかには無理難題を要求するようなケースがある。
 保護者のクレームには担任だけでなく校長が対応することが多い。ある小学校の校長が語った、ごく日常的なクレームの事例を次に示します。
 若い親はわが子のことに必死ですから、たとえば担任に次のような注文をつけることがしばしばあるのです。
「先日、運動会の短距離走を保護者席から見ていると、うちの子が一等のはずなのに、どういうわけか二等にさせられた。うちの子を一等にすべきだ!」
と言う激しい物言いにつられて担任がつい
「そんなことを今さら言われてもゴール到達結果はすでに判定されたわけですから、変更はできません」
などと返答してしまうと、水かけ論になってしまいます。
 確かに混戦だったので、眺める場所によって結果が違って見えたのかもしれません。しかし、問題は判定結果がどうかということよりも、その対応次第では保護者との関係がこじれてしまう点にあります。
 このクレームへの対処法について、校長は次のように語っています。
 このクレームに対しては、担任はとっさに次のような判断を下せるかどうかがポイントだと思います。
 注文の内容とその口調から、その親のわが子かわいさの気持ちの表れだと受け止め、親としての気持ちにそうことが第一だと判断する。
 そこで、その気持ちにまず耳を傾けるという態度を取る。同時に、短距離走の判定は係りが厳正に見て下していると明確に伝え、結果をいじれば当の本人も周囲もどう感じるだろうか、問いかける。
 そして、一等に近かったその子のがんばりを評価し、次の機会にまた挑戦しましょう、と励ます。
 こうした話し合いの手順を丁寧に踏んでいけば深刻なもめごとにはならず、おそらく保護者も最終的には納得してくれるはずです。
 この語りから、基本的な対処法を導き出すことができよう。
 まず、クレームに対しては、少しでも距離を置きながら冷静に接すること。クレームの背後に潜む本音は何であるかを探ること。
 保護者の欲求に共感しつつ、同時に学校の基本方針や判断も明確に伝えること、などである。
 こうした対処は、とりもなおさず保護者との信頼関係を、教師自身が最初から創り出していく手立てにほかならない。
 子どもや保護者に寄り添いながら、さまざなニーズに応え、抱かえる問題を解明し、問題解決に向けた手だてを講じて、子どもや保護者の生活を充実させ、喜ばれ満足するような関係を築きあげなければならない。
 そこで、この対人関係という視点に絞って求められる教師の資質・能力は
(1)
誠実な人柄で、個々の状況に応じて適切に対処できること
 その上で、個々の状況に応じて適切に対応できる対人関係能力を欠くことははできない。
 日常的なことばのやりとりなどを見直しながら信頼関係を図り、相手の潜在能力を引き出す、コーチング手法も参考となる。
(2)
対人関係能力は教職についてから、学校現場の経験によって磨くことができる
 人間性の資質に弱点があったとしても、経験を通じて習得される対人関係能力はある程度カバーできるだろう。
(3)
対人関係能力に決定的に問題があって、学校現場の経験をいくら積んでも対人関係能力を磨くことがきわめて難しい場合には、教職には不向きである。他の職種を選択したほうが当人にとっても幸せであると判断される。
 教師は常に研究し探求していく態度が求められていると思います。
 探究心がないと、授業の教材研究であれ、生徒指導、学級経営、保護者との人間関係であれ、教師の職務すべての領域で発揮される実践の原動力が弱くなり、実践すべてが振るわなくなるだろう。
(
今津孝次郎:1946年生まれ、名古屋大学教授・附属中高校長を経て名古屋大学名誉教授。専門は教育社会学、学校臨床社会学、発達社会学)

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