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子どもが楽しむ笑いのある授業にするには、どう演出すればよいか

 授業をしている教師は脚本家であり舞台監督であり、演出家でもあると私は思っています。
 授業のシナリオを書き、必要な環境を準備し、子どもの動きや反応に向き合いながら、子どもが夢中になってくれるよう演出していく。
 遊び心を持ってつくる授業にはその思いの分だけ熱のようなものがこもります。
 その熱が子どもに伝わるからこそ、子どもたちが夢中になる授業が実現できるのではないか。そう思って様々な演出を夢中で試行錯誤しています。
 作文の授業で、私が次の一文を板書します。「悲しくて(    )歩いていました」
 さて、この(  )の中にはどんな言葉が入るかな、と聞くと(トボトボ)と書いた子どもがいました。
 その子どもを指名して前に出てきてもらい「どんな感じなのか歩いてみてくれる?」と実際にみんなの前でやってもらうと、その子は肩を落として、下を向いて、歩いてくれました。
 すかさず私が「確かに悲しそうやなあ」とコメント、子どもたちから笑い声がおき、教室がわきました。
 動作やジェスチャーなどを子どもたちにさせることは、授業を盛り上げる一つの演出になるのです。
 授業中に子どもを指名して発表させるとき、私は状況によって次のように使い分けるようにしています。
(1)
賛成か反対か挙手させる
(2)
まず、意見をノートに書いて、それを読みながら発表させる
(3)
隣同士で話し合いを合をさせてから、どちらか一人に「ペアの意見」として発表させる
(4)
意見が分かれたら人数の少ないほうから発表させる
(5)
一つの列を選んで順番に発表させていく
(6)
言いたい子全員を立たせて発表させる
(7)
教師は指名せず、言いたい子どもに自分で起立して発表させる
 授業中、脱線気味の子どもを注意すれば教室の空気が壊れることがあります。
 同じ子どもに何度も注意していると、次第に空気が淀んできます。クラスの雰囲気を壊さないために、「さっぱりとしたユーモア」を交えて次のように注意するようにしたのです。
「○○ちゃん、もし次、後ろ振り向いたら、きみの真横に森川先生のパネルを立てるから」
「○○ちゃん、スイッチ押したら、穴があいて落ちていくよ」
 笑いの素材は「子どもの言葉」の中にあります。授業における「笑い」で大切なのは「子どもの言葉で笑わせる」ということです。
 笑いをつくるきっかけは教師のツッコミであっても、笑いの主役はあくまで「子ども」にしたいと思うのです。
 子どもがツッコミを入れるからおもしろいのです。例えば、赤ちゃんの話は私のクラスの子どもたちの大好物です。少し、いたずらを仕掛けてみましょう。
「高い高~い。かわいいよね。赤ちゃんは。○○くん、きみもこうやって大事に育ってきたんやで~」「ほ~ら、高い、高~~~い」天高く赤ちゃんを放り投げるジェスチャー。
 子どもたちは、間髪入れずに「あかんやん」クラス中が大爆笑です。
 ここでこの子なら「こう言ってくれるだろう」「こんなことをしてくれるはず」というようなことを想像できるのは担任だけです。
 そのために、授業中の空気をよみとり、その子がお笑い担当なのか、笑いの受け手側にいるのか。子どもの性格や、生活の調子がいいときか、悪いときか、細かな観察が必要です。
 言葉に温かく対応できるクラスをつくろうとする教師の思いが、教師のツッコミを生み、笑いにつながる「子どものひと言」を生むのです。
 子どもたちが一番聞きたいのは自分のことやクラスの友だちが出てくる話です。
 話の中に個人名を入れて、鮮度が高いうちに具体的なエピソードを話してみましょう。子どもたちの食いつきは明らかに変わってくるはずです。
 教師の話し方を磨いてくれるのが、子どもたちの反応です。大きな笑いが起こった。反応が薄かった。子どもたちの様子を見て、ウケた話は記録しておくようにして、次に生かします。
 子どもたちが話を聞くとき、教師が一方的に話をすると、途中で飽きてしまうことがあります。そうならないようにするには、どうすればよいでしょうか。
 例えば、教師が子どもに「わかる? わかるよね? どうなったか!」といった「話の中に共感できる」ことが出てくれば、子どもたちを話に巻き込むことができます。話すときは「共感」の飛び石を置きましょう。
 話力をつけるために大切なことは、日ごろから「ストーリー思考」でいることです。
 遭遇したおもしろい話を「いかに子どもたちにリアルに話すか」を念頭に置きながら頭の中で話すことをくり返します。
 子どもたちはここで笑ってと、冒頭からオチまでをまず考えます。私は毎日のように、どう話したら子どもたちが笑ってくれるだろう、ということを考えています。
 授業で、うわあ、これはうまい伝え方だなあ、子どもがノッているなあ、という場面では必ず「話し方」に工夫があります。
 教師がそれまで蓄積してきた技が凝縮されてその空気をつくりだしているのです。話がうまくいったときはメモをします。常に意識していなければ話し上手になることはありません。
(
森川正樹:兵庫県生まれ、兵庫県私立小学校教師。研究教科は国語科。教師塾「あまから」代表、教師の笑顔向上委員会代表、基幹学力研究会幹事、読書会「月の道」主宰)

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