新任で担任を受け持った一年間は困難や苦悩に満ちたものでした
私の新任教師としての教師生活そのものが困難で苦悩の日々でした。
経験不足や仕事がわかっていないことからくるものでした。指示や指導が適切でなく、子どもたちがどうすればいいのかわからなくて、困っている状況は毎度のことでした。うちのクラスだけ遅かったりしました。
職場の教師は 「わからないことがあれば聞いてね」と言ってくれるけど、すべてがわからないので時間がかかり、それにつきあってもらえるという雰囲気がないから、結局何も聞けなくなってしまう。
いつ、どのタイミングで何を聞いていいかもわからなくて、そのことが次の失敗へとつながっていきました。
新任者研修の出張の日に、T男が学校を抜け出しました。その日からT男との格闘の日々が続きました。
私を小バカにし「あっそ、よかったね」「無理ー、拒否ー」「こっち見んといて」「なんで先生がきめんねん」「死ね」と暴言を投げつけてきます。
クラスの子にも暴力、暴言、落書き、嘘をついたり、学校で一番の問題児となりました。
そんなT男がいるクラスで、私はまともに授業も指導もできないのですから、子どもの不満はたまってきます。正直に言って、T男がいなければどれだけ楽だろうかと思った。
「クラスの雰囲気づくりには遊びが有効よ」と言われ、ドツジボールをしてみると、ケンカが始まります。
何をしても悪循環に陥る中で、私と子どもたちの関係は悪化していきました。
子どもの不満は保護者にも伝わり、保護者も不満を持つようになりました。口に出して攻撃してくる保護者がほとんどいなかったことが救いでした。
T男とのことは苦悩の一つだったけど、それでもなんとかやってこられたのは、二人とも阪神ファンだったことです。T男と野球をしているときは、あの挑発的で憎々しいまでの表情が嘘のような、子どもらしい表情でした。
これから先、今までと違う関係をつくっていけるかも知れないという前向きな気持ちを持たせてくれた。
T男の家を家庭訪問したとき、家での楽しみがほとんどないことを知りました。T男の問題行動の背景には、育ちの中でのしんどさがあることが見えてきました。
それが困難を受けとめるクッションのようになり、学校でどんなことができるか前向きに考える回路が出来るようになりました。
初任者研修で私と同じように苦悩を抱えている教師がいることを知って、希望や勇気を与えてくれました。
その教師は保護者対応でトラブルがあった。でも、親の言い分を理解しようと努め、その親の生活を知ることで、自分の考え方をもう一度とらえ直していった。
「あ、私だけじゃない。やっぱり、その子や親の生活を知るって大切なことなんやな」と安心させてくれました。
学校の職場では、じっくりと同僚教師と話す時間がありません。そんな中で、サークルや研究会の仲間たちとのつながりは本当に大きなものでした。
それらの場で、自分の困難や苦悩を語り、吐きだしていました。そのために、その時感じたことをメモに書き残していました。書き残したことで、自分の状態を客観的にみることができたのだと思います。
それと、サークルや研究会で仲間が必死に生きていこうとしている姿や話を聴くことで励まされ、勇気づけられました。
(滋賀県公立小学校教師)
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