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転勤して担任を受け持ったたが、学級の荒れや保護者対応に、身も心も疲弊してしまった

 A教師は授業も特別活動も熱心に取り組み、熱意を持って子どもに接してきた。転勤するまでは特につまずくことなく、農村部で3校の学校を経験し教師の仕事に燃えていた。
 都市部の大規模校に転勤し、5年生の担任となった。教育熱心な親が多かった。
 1学期途中から、女子3名が問題行動を起こすようになった。禁止している物を学校に持ってくる、授業中に出歩く、エスケープする、集団で万引きをした。
 保護者の協力を得ることが必要と考え、問題を起こす子どもの親を呼んで話をしたり、家庭訪問もしたが、一向に改善されなかった。
 1学期後半には3人に追随する子どもも出てきたので学級会で考えさせたり、校長と相談し、保護者会を開催した。
 しかし、保護者会では
「男の先生なのだから、しっかり子どもたちを締めてくれると期待していたのに」
「担任や学校の指導が悪い」
と学校批判の会のようになってしまった。
 A教師は弁解に終始するしかなく「よそから来た新米教師として、親から値踏みされている」ような嫌な感じを抱いた。
 その後、学年主任が中心になってA教師をサポートし、子どもたちへ様々な働きかけを行った。しかし、3人が「それ嫌だ」と言い出すと周りの子も同調したり、注意してもその場限りで効果がなかった。
 学級の指導に行きづまりを感じるようになっていった。まじめな子の親から「何とか早く学級を立て直してほしい」と苦情が寄せられた。
 
「にっちもさっちもいかない」という気持ちが強くなり、疲れがとれずに、だるい感じが続き、出勤したくない気分に襲われる日が多くなった。真剣に教師をやめることを考えるようになった。
 転勤直後ということが、対応を難しくした。慣れない土地柄や学校風土の違いから、それまでの自分のやり方がうまく通じない。
 
「少しでも早く周りの期待に応えて、しっかりとしたクラスにしなければ」という焦りから、子どもや保護者への対応が空回りしてしまった。
 そうなると、全体を見渡したり、長期的に考えたりして行動することができなくなり、行きづまりばかりが浮きあがって、身体も心も疲弊してしまうことになった。
 結局、1年間、精神的に苦しい状況が続き、やめたいという気持ちが常に頭から離れなかった。
 クラスの子どもが6年に進級したときに、違う学年の担任になったことで気持ちが楽になった。そのまま6年にもち上がっていたら、教師をやめていたかも知れないとA教師は語った。
(
古川 治:1948年生まれ、大阪府公立小学校教師・指導主事・校長、東大阪大学教授を経て、甲南大学特任教授)

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