「お前は絶対に必要な人間なんだ」と言われれば、そこが子どもにとって安心して過ごせる居場所になる
私がスクールカウンセリングをはじめた頃、すべての教師に反抗的な態度をとる女生徒のカウンセリングを引き受けた。
女生徒は青春の孤独と悩みを抱かえていた。カウンセリングをはじめて半年ほどして退学した。
最近、その女生徒が8年ぶりに私の病院を訪ねてきた。大学を卒業し、今は就職して親から自立して暮らしていると報告してくれた。明るく前向きに生きる大人の女性になっていた。
「生徒指導のN先生と、吉田先生の二人が私の味方になってくれたから私は絶望せずにすんだし、いまこうして生きていられるんです。そのことをお伝えしたく、お訪ねしたんです」
彼女が退学したとき、私は無力感にとらわれた。が、ささやかながら力になれたことを知って、肩の荷がおりた気分だった。
どんなに意を尽くし、こころを込めて接しても、子どもがわかってくれない。しかし、そう見えても、心の中で徐々に変化が起こっている。外からは気づきにくい。子どもの成長とはそういうものだ。
大事なことは、そうした子どもの回復力を信じて接することだと私は思っている。
子どもがどんなに親に反抗しても、親は自分の子を見捨てないでほしい。どんなに手を焼かせる子でも、いつか必ず親の心情を理解するときがくるのだから。
思春期の子どもは、自分は親や社会にどう見られているのだろうか、本当に必要とされているのだろうか、という不安を感じている。
そんな宙ぶらりんの心理が問題行動の背景になっていることが少なくない。
親や周囲の大人から「お前は絶対に必要な人間なんだ」と言われれば、そこが子どもにとって安心して過ごせる居場所になる。
そんなことは口で言わなくても、わかっていると思うかもしれないが、子どもの様子が心配なら、あえて言ってほしい。何よりの支えになるはずだ。
(吉田勝明:1956年福岡県生まれ、精神科専門医)
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