子どもをほめることは、叱るよりも難しい、どうすればよいのでしようか
教師と子どもの人間関係の最終目標は、子どもと確かな信頼関係をつくり、子どもの個性や希望や目的を引き出し、実現させることです。
ほめることは、信頼関係を築くためのひとつの手段です。信頼しあえる関係になるまでは、手間も時間もかかるものです。
そのため、焦らずに、じっくりと腰をすえて「あなたの存在を感じていますよ」と、子どもを認知することから始めます。
それによって、教師と子どもの人間関係にしっかりとした土台ができれば、ほめる効果は確実に積みあげられます。
子どもを喜ばせることばかりを意識してほめると、わざとらしいほめ方、口先だけのほめ方になりがちです。
これでは、ほめることで、子どもに不快感を与え、逆効果になってしまいます。
子どもをほめることで、信頼を得るには順序があります。
まず、子どもを十分に認知し、その上に、徐々に、関心、理解、承認、賞賛と順序をおっていきます。
承認とは、ほめることだけではありません。叱ることも承認になります。自動車の運転にたとえると、ほめることは「アクセル」、叱ることは「ブレーキ」です。
ほめることは、子どもが成長するための推進力になります。
自動車で例えれば、ちょっとだけアクセル(ほめる)を踏んでも、自動車は前進し続けることはできません。常にアクセルを踏み続ける(ほめ続ける)ことが必要です。
叱ることも必要です。アクセル(ほめる)だけでは、自動車を制御できず、道を外れ、事故を起こします。
ブレーキ(叱る)だけでは、やる気をなくし、まったく前進しません。「ほめる・叱る」の両方が必要なのです。八割ほめて、二割叱るぐらいがよいのです。
すべての子どもと分け隔てなく友好的に接することが理想です。
しかし、教師も人間です。「どうしても気が合わない」という子どもがいたら「子どもの長所だけを見る訓練」をするとよい。
長所は行動に表れますから、その行動をつぶさに観察し、記録しましょう。私は、一日に三つ、子どもの長所を記録しています。
私は、気が合わない子どもをほめるときは、ほかの子どもに、気が合わない子のことをほめます。そのほめ言葉が、回りまわって、本人の耳に入り、人間関係の修復に役立つことだってあります。
子どもが話をしているときの教師の「うなずき」や「相づち」は、ほめしぐさとなります。
私は、首を縦に振ってうなずいたり、できるだけたくさんの「相づち」(ふんふん、なるほど、ほうー、いいね!など)をうつようにしています。
そうすると、子どもは教師が話しを肯定してくれていると感じ、気分がいいものです。どんな子どもでも、高く評価してくれる人の話には熱心に耳を傾けます。
ねぎらいの言葉でほめるようにします。
「ご苦労さん」は、実に気持ちが良い、すてきな感謝のほめ言葉です。心からのねぎらいをこめると、より思いが伝わります。
一生懸命にやっているのに、望むような成果が上がらない子どもがいます。成果ばかりに向いている目を過程に向け、取り組み姿勢や過程に価値を見いだすように、ほめるのがポイントです。
マイナス要因をほめることもできます。努力している中で起きたことなら、例えば「今回の計算ミスは、良い勉強になったね」と言ってあげましょう。
目立たないことをほめましょう。視点を転換して、強い関心とていねいな観察をすると、目立たないことに気がつきやすくなります。例えば、真面目さや几帳面さなどに注目するとよいでしょう。
ほめるときは、教師を主語にして、アイメッセージでほめましょう。例えば「掃除をよく頑張っているね。先生もやる気が出てくるなあ」と、ほめると、子どもは素直に受け入れやすくなります。
子どもをほめることで、教師の能力を高め、新しい発想ができるようになります。
(神谷和宏:1960年生まれ。愛知県公立中学校教師。コーチングの専門機関で学び,プロコーチとなり,現在は教育現場でコーチングを通して子どもの夢をはぐくむ活動を行っている)
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