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荒れたクラスで起きた、深刻な「いじめ」を解決するのに、とった方法とは

 私は六年生の担任になりました。クラスの子どもたちは傷つきやすいがデリカシーがない。かまってほしいという感情が相手の怒りをかっています。冗談とイヤミの区別なく頭に浮かんだことが次々と言うことがあります。
 この子どもたちに、やさしさや思いやりはあるのか、と思ってしまう。そんなとき、一番心配していた「いじめ」が起こりました。
 Kくんは、体も大きく、勉強もできるほうでしたが、個性が強く、腕力があり、友だちを不快にさせることもある。
 Kくんは、自分の個性を指摘されたり、友だちからつらく当たられると、教室でよく暴れるようになりました。
 彼が暴れると一人では手に負えないので、数名で飛び掛っていくので、一人対多数の対立関係ができました。
 Jくんは、陰で仕掛けておいて、Kくんに暴れさせて楽しむたちの悪さでした。
 三人の男の子は、ちょっかいを出し続けていました。Kくんとケンカになっても、誰もKくんの側につかないと、わかっていたからでした。
 女の子たちは、Kくんが暴れて騒ぎになるのを気晴らし的に眺めていました。騒ぎをつくりだす男子たちは、まずいこととわかっていながら、やめられないようでした。
 Kくんに対する深刻な「いじめ」の構造ができあがっていました。
 五月になると、Kくんは掃除用の洗剤を持って「先生、これ飲んだら死ねるかなぁ」とつぶやきました。もう、予断の許されない所まで追い詰められていました。
 休み時間に、Kくんが暴れて教室中、大騒ぎになって、みんなで押さえているとの知らせを受けました。きっかけは、Kくんのランドセルをわざとロッカーから落としたということでした。
 教室に駆けつけた私は「今こそ、いじめ問題に切り込まなければ」と決心しました。
 女子に教室で自習を指示し、Kくんを放送室に入れ、教頭先生に見てもらいました。
 隣の教室が体育で空いていたので、男子全員をそこに入れて輪になって座りました。
 
「いじめ」をつぶす指導ができるのか、不安でいっぱいでしたが、私の気持ちを全力で男子たちにぶつけることにしました。
 私は
「君たちのやっていることは、深刻な『いじめ』である。Kくんの心の中は、もはや全く余裕のないところまで追い詰められている」
「君たちのKくんに対する行動は、癖のようになっていて、すごいイヤミになっている」
「このままでは、お互い、みんなの心がズタズタになるぞ。自分で自分をコントロールしろ!」
と、必死の思いで語りました。
 幸い何人かが私に同調する発言をしてくれて、しだいに真剣に、深刻に受けとめる雰囲気になりました。
 一人ひとりの表情を見て「ここで切り込める!」と思いました。
 私は「一人ずつがKくんとどんなふうに話し合って解決したいか、自分で考え、整理のついた人から放送室で待機しているKくんのもとへ、たずねに行く」ように指示しました。
 しばらく、沈黙が続きました。最初に謝ると決意したのは「いじめ」のリーダー的存在だったMくんでした。
 私は、Mくんと共に放送室に入りました。Mくんは心からわび、今後の行動の決意を語りました。そして、次々と男子たちがやってきて、自分の気持ちを語りました。
 Kくんの表情は、すっかりなごみ、みんなに
「オレみたいなつらい思いをするヤツを二度とつくらんといてほしい」と言いました。
 Kくんへの「いじめ」はなくなりましたが、自分の心や行動をコントロールできず、友だち同士傷つけあうことは、しばしば起こりました。
 子どもたちは、自分の言葉と行動の何が相手を傷つけているのか、わからないことが多かった。
 そこで、私は「もめごと」の話し合いの指導をつぎのようにしました。
 全員に聞き、もめごとの最初から順に、黒板に色チョークを使い図式にしていきました。図式で一人ひとりの行動を示しました。
 だれの発言が不適切であったか、だれが愉快犯的な行動をとったのか、だれがやじうま的に、けしかける行動に出たのか明らかにして、それぞれに反省を求めていきます。
「こんなこと言われたら、○○くんは腹が立つわな。当然や」
「でも、そうだからと相手をすぐ叩いたらあかんわ。せめて、『何でそんなこと言うねん』ぐらい言わないと」
 何回もこういった指導をする中で、自分の行動を見つめ直すことのできる子どもたちが増えてきたように思いました。
 暴力ざたはずいぶん減りましたが、小さな「もめごと」は、しょっちゅう起こりました。
「自分の心をコントロールせよ!」は、卒業までの私の口癖になってしまいました。
(
藤田武久:1962年生まれ、大阪府公立小学校教師)

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