孤立感、孤独感を抱くなどで、子育てに問題が生じる保護者は、子どもにどのような影響を与えるのでしょうか
子育てに問題が起きる多くのケースを見ると、孤立感、孤独感を保護者が抱いている場合が少なくない。
保護者が付き合う人々の中で、自分が認められ、他人から支えられている実感があればよい。
しかし、例えば、夫婦関係が微妙にすれ違うようになるなど孤立感、孤独感などがあると、子育てに問題が生じることがある。
子育てのやり方によって、子どもに問題が生じる保護者には、つぎのようなタイプが考えられる。子どもにどのような影響を与えるのでしょうか。
1 わが子が優れていることにこだわり、子どもを支配しようとする保護者
世間からの評価を重視します。そのために、世間から「よい親」と認められることをめざします。他者の評価を気にするので不安感が高い。
いわゆるお受験は、その代表である。「よい学歴がなかったら不幸な将来が待っている」という思いにとらわれ「よい子」に育てることに必死になる。
不安を背景として「よい子」作りに保護者が躍起になると、そこで育つ子どもは、感情を抑制する傾向が強くなる。
そして、保護者が高い不安を持つので、子どもも不安そのものは高い。
したがって、感情が一定以上高まると、もはや自分ではどうにもコントロールできなくなる。
さらに、常に保護者の「指示」にさらされているので、他者を「指示」して、コントロールしようとする傾向も強くなる。
一見、よい子だが、つぎのようなタイプの子どもが育まれてくる。
(1)学校でだけ問題を起こす外弁慶タイプ
(2)一度感情を害すると、なかなか気持ちの修復が効かない
(3)言葉によって仲間を傷つけて、それが当然であるかのように振る舞う
2 自分やわが子だけが尊重されることを第一と考える保護者
保護者がわが身だけが尊重されること第一と考える。同じように、わが子も尊重したいと考える。
子どもを受容し「子どもの感情を害しない」ように考える。
子どもから「よい親」と思われることをめざす。他者の評価を気にするので不安が高い。
このタイプの保護者は、子どもの感情を乱すことは嫌で、子どもに嫌われたくない。それゆえ、子どもを叱らず、子どものご機嫌を取ってしまう。子どもの意見を尊重する。
しかし、本来、子育ては、子どもの、不快な感情や、願いがかなわないときに生ずる、怒りや哀しさを保護者がしっかりと受け止めてあげなければならない。
子どもが感情を害しても、子どもに「ダメなものはダメ」と言い、保護者はニッコリと笑って、子どもに向き合うようにしなければならない。
これが、保護者が子どもと向き合い、子どもを受け入れることの本来の意味なのだ。
だが、子どもの不快感に保護者がうろたえると、子どもは不安を覚える。不安と不満がくすぶり続ける。
しだいに、子どもの不快感を出すことで、大人を動かす道具になっていく。そこで、ますます大人は、子どもの要求に譲歩をし続ける。
このようにして、ストレスに弱く、感情のコントロールが苦手な子どもが育っていく。
いろんな場面で、不快感を出すことで、大人をコントロールしようとする癖を持つ子どもになっていくのである。
3 自分の生き方を優先する保護者
子どもの世話そのものを疎ましく感じる保護者がいる。
保護者が「生計を立てる」ことに精一杯で、子育てにエネルギーを振り向ける余裕をなくしていることもある。
風呂に入っていない、学校に腹を空かせて登校するなど、保護者から基本的な生活上のケアをうけていない子どもがいる。
このような保護者に育てられた場合、そもそも感情のコントロールの仕方を学ぶことができない。
生活の基本そのものについても、子どもは学ばないまま捨て置かれているからである。保護者から敵意さえ持たれ、関わりを拒絶されているのだ。
そこで、子どもは愛情に対する飢餓と、他者に対する不信、さらには強い不安と怒りを混在させるようになる。
(小林正幸:1957年群馬県生まれ、東京都港区教育センター教育相談員、東京都立教育研究所相談部研究主事等を経て東京学芸大学教職大学院教授。不登校を始め学校不適応、ソーシャルスキル教育、教育相談、教育技術を研究)
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