相手の心を動かす叱り方とは
「私、打たれ弱いんです」と言う人も多い。優しくしてもらいたいのは、みんな同じ。
ただ「人間も鉄のように打たれることで強くなることがあるんじゃないか」と、私は、わが身をふり返ってみて思います。
人と衝突して「自分と違う考えの人がいるのだ」ということを知ったり、逆に「お互いの距離が縮まったり」していくものでしょう。
どうやら、今の若い人たちは「注意される」とか「叱られる」という経験が少ないようですね。
親は子どもに嫌われたくないから叱らない。だから、子どもは叱られることへの耐性がなくて、ちょっと厳しいことを言われただけで、すぐにへこんでしまう。
ほめられると、人は図に乗るというか「自分は絶対だ」と思ってしまうような気がします。自分に心地いいことしかやらなくなって、他人への配慮が欠けた人間になるかもしれない。
叱ることと、ほめることのバランスが問題なのでしょうね。
叱られ続けると自信を失ってしまうかもしれない。一方、叱られることによって、自分は正しいと思っていたことが「実はそうではないかも」と気づいたりする。
叱られると「今に見返してやる!」と発奮するエネルギーが生まれるかもしれません。そう、叱られるのも悪くはないんです。
昔から「叱られなくなったら、おしまい」とも言いますし、とくに若いうちは「私、打たれ弱いんです」なんて言っていないで、どんどん叱られたほうがいいんじゃないでしょうか。
叱られたことを、のちのちの笑いのネタにするくらいのつもりで。
叱られ下手が増えると、「叱り下手」も増えるようですね。
「叱り方がわからない」と頭を抱かえている人がいます。
そうやって「どのタイミングで、どう言えばいいか。ああでもない、こうでもない・・・・・」と、ぐずくず考えていると結局、要点のはっきりしないことを言うことになって、相手には何も伝わりません。
私の個人的経験から言うと、叱るときは「要点だけをバシッ」と言って「わかればいいのよ」というふうに、いさぎよく。そして叱った後は、ケロリとしているというのが、効くように思います。
また、叱るときは、ヒステリックに聞こえないよう、声を低めに、お腹の中から落ち着いた声を出すようにするといいかもしれません。
相手に「この人が怒るのだから、やはり自分が悪いんだ」「この人に叱られたら、怖い」と思わせる。
いざとなったら、怖い存在になるということを、相手に知らしめなければ、効果はないでしょうね。
私自身、叱られるのはやっぱり嫌いですし、人様を叱るなんてことも、うまくできません。
ただ、こうして改めて考えてみると、叱るのも叱られるのも人生修業のうち。
叱られるうちが花だし、人を叱ることも自分を成長させてくれるのだと思うのです。
叱るときの心得としては
(1)相手のことが大事だと思うなら、叱らなければならないときがある。
(2)迷惑をこうむった人がいるなら、叱る責任がある。
(3)今叱っておかないと、取り返しのつかないことになるかもしれないと、思おう。
(4)感情的にならず、相手の言い分にも耳を傾ける余裕を持つ。
(5)反感を抱かれては叱り損。相手が納得できる言い方を。
(6)必要のないことは言わない。
(7)割り切って「叱る役」に徹してみる。
(阿川佐知子:1953年東京都生まれ、エッセイスト、小説家、タレント)
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