いつの時代にも教師に求められる能力とは
これまで提言されてきた、教師に必要とされる資質能力として、
(1)子どもに対する愛情を基礎とする広く豊かな教養
(2)教育の理念や人間の成長・発達についての深い理解
(3)教科等の専門的な知識
(4)実践的指導力と子どもとの心の触れ合い
これらの基本になるのは、教師の人間性つまり、深い愛情と信頼、人間関係の深さである。
日本教育会(注)の調査研究委員会がとらえる、いつの時代も教師に求められる資質能力とは
1 子どもへの人間的指導者としての資質能力
(1)愛情
基本となるのは「子どもへの愛情と思いやり」である。子どもが社会の一員として育つためには親と異なる社会性のある愛情が必要である。
(2)情熱
仕事に対するひたむきさが求められる。困難を乗り越える力はあきらめずに取り組む姿勢である。その根底には、熱い思いがなければならない。
情熱こそ、子どもの指導者として意欲的に取り組むときのエネルギーなのである。
(3)観察力
指導にさいしては子どもの状況や心情を的確にとらえることが必要である。子どもの心の内を見通す観察力が必要になるのである。
(4)人間性
言うまでもなく、原点は教師の人間性である。大人である教師に影響を受けて子どもは成長する。教師の指導姿勢や生活のあり方を受け入れ、成長の糧にしていくのである。
教師の人間性に責任と誇りを持ち、子どもとしっかりと向き合う姿勢が重要である。
(5)話し上手・聞き上手
子どもの気持ちに謙虚に耳を傾け、同時に自分の気持ちをしっかり伝えることは、日常の場で重要なことだ。聞き上手の真髄は相手の立場に立ち心を込めて聴くところにある。
人間のもつ豊かな表現力とコミュニケーション能力を磨き、子どもや保護者に対して話し上手・聞き上手になることは大事なことである。
2 学習指導者として資質能力
(1)教科の専門的力量を高める
教師の職務の第一は教科指導である。教科指導力の有無が子どもとの信頼関係の根拠となる。
日頃から、教師自ら学び、自信を持って指導できる力量を高めるよう努力が求められる。
(2)授業構成を改善する
教材研究が不可欠である。教材内容の理解、子どもの学習状況、教材の扱い方、授業の流れ、評価とその対応など事前に準備することは多い。
授業は生きものである、常に見直し、改善を図り、より質の高い授業をめざすことがもとめられる。すぐれた教師の授業力を共有することが指導力の向上となる。
(3)指導方法を工夫する
日々の授業を振り返り、子どもの声を聞き出し、指導方法の改善を図る。教師同士の学びが重要であり、校内研修の充実が図るようにする。
3 学校組織の一員としての資質能力
(1)協調性・チーム力
学校には学年、分掌等の組織がある。協調性をもって仕事をすることが求められる。
互いに意見を出し合い、議論して合意点を見つけ、リーダーのもとでチームとして機能する組織の一員として仕事ができることが大切である。
(2)責任感
与えられた業務に対して責任を持って行うことや、進捗状況を報告し、指示に従い改善していくことが重要である。
(3)コミュニケーション力
子どもの指導、保護者への説明、学年や分掌の作業など、すべてについて趣旨、目的、状況、結果等について的確に説明し、伝えることが重要である。
同時に、常に相手の意見や考え方を聞く姿勢や受容する態度が必要である。
(4)情報収集力・ネットワーキング力
正しい情報をできるだけ早く収集することが必要である。特に事故・災害等への緊急対応のためには、多様な収集手段と的確な判断と行動が必要である。
日頃から、アンテナを高くするとともに、情報収集のネットワークをつくることが大切である。
(4)事務処理力
学校には膨大な事務作業がある。限られた時間で的確な処理をすることが必要である。
そのために、日常的に先を見通し、確かな処理技術を着実に身に付けることが大切である。
4 学級(学校)の経営者としての資質能力
(1)企画力
経営の要諦の一つは先を見通す目であろう。
経営者は人を動かすだけの度量、明確な目標、リーダーシップが求められる。
そのうえで、的確な現状分析と目標設定、実現に向けた斬新な発想とアイデアを活かす力をもつことが大切である。
(2)実践力
独りよがりな行動力でなく協力者とともに小さな目標を実現しながら目標を達成させることである。
行動しつつも常に考え、周囲の意見を聞き、修正できる姿勢が大切である。
(3)危機管理力
迅速に対応し、被害を最小限にとどめること、関係者へ連絡すること、危機管理体制づくりと情報収集をすること、子どもと家族を第一とすること、事後処理を丁寧し課題を確認することなどが必要である。
リーダーシップ、指揮系統の一元化、情報の共有等が求められる。
(4)課題分析力・決断力
ネックになっている部分を発見し、流れが止まっている部分を取り除き、新たな流れをつくることである。
問題を見極めるためには、相対的な見方や複眼思考が必要となる。
また、立場を変えて見ること、別の角度から見ること、組織の外から見ることが大切である。
(5)思考の柔軟性
前例にとらわれない発想や柔軟な思考も大切である。そのために、学校以外の目で見たり、子どもや保護者の立場で見たりすることが必要である。
5 教師の成長のために常に学び続ける資質能力
(1)積極性・向上心
何事も恐れず行動し、失敗も勉強のうちという精神で仕事をすることが大切である。
率先して研究授業を実施し、授業を工夫改善し、校外の各種研究会へ参加する。
勤務先も小学校だけでなく、積極的に他校種を経験したい。幅広い経験が自らの成長の糧となる。常に学び続ける向上心を持ちたい。
(2)素直さと謙虚さ
学ぶときに最も大切なのが素直さと謙虚さである。自信過信、慢心の姿勢の態度からは成長しない。
何事も周囲の意見を正しく聞き、受け入れたのちにそしゃくし、生かして始めて成長につながるのである。
(3)明るさ・健康
教師の明るさが周囲を明るくし、元気さが周囲を元気にする。
不調の時、どれだけカバーできるか、どこまで食い止められるかが、次への回復を左右する。教師は心身ともに健康であることが求められる。
(日本教育会:全国の幼稚園・子ども園、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校の学校教育のリーダー、PTA、教育関係者をはじめ、教育に関心のある方は、どなたでも入会できる、総合的な教育研修団体です。会員に月刊誌『日本教育』を発行する。毎年1回、全国各地で、幼・小・中・高・特別支援学校の教職員及びPTA等が一堂に会し教育を考える会を開催している。会費は年額3,100円です。)
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