担任になったとき、子どもや保護者とつながるためには、どうすればよいか
〇学級担任が子どもとつながる
学級担任になったとき、私が一番大事にしているのは始業式の日です。そのとき、子どもたちが先生に対してどんな印象を持ってくれたか、これがとても大事だと思うのです。
どの親も、子どもが家に帰って来ると、必ず「どんな先生?」と聞きます。
そのとき「おもしろい先生だよ」「今年は何とかがんばれそう」そんなふうに子どもが答えてくれると、親も安心し、その後のつながりもうまくいきます。
そのために、私は始業式の日に、学級開きの時間を取りたいと思っています。それで、各教科の教科書すべてと健康診断書などの書類を一セット揃え、一人ひとりの机の上に置いておきます。
そうすることで、30分くらいですが、学級開きの時間を確保することができます。
学級開きの準備のために、私は指導要録を見ておきます。
学級開きのプログラムは
1 子どもたち一人ひとりの呼名
私は必ず一人ひとりに言葉をかけます。
「〇〇くんは、運動会のリレーで頑張ったんだってね」
「〇〇さんは、図工が得意なんだってね」
そういう、ひと言メッセージの情報源は指導要録です。子どものいいところがいっぱい書いてあります。それを見て名簿にメモしておくと、一人ひとりに声をかける材料に困りません。
「みんなのいいところをこんなに知っているよ!」というメッセージになります。そうすることで、子どもたちとの最初のいい出会いをつくることになります。
子どもは、自分のことを知ろうとしてくれる先生が大好きです。
2 教師の紹介
教師の価値観を必ず紙に書いて、子どもに伝えます。私の場合
「先生はこういうときにほめる先生なんだよ」と、次のような内容を伝えます。
(1)つらいことでもくじけず、最後までがんばったとき
(2)友だちのためにがまんできたとき
(3)友だちにやさしくできたとき
(4)みんなの前で、自分の考えをしっかり発表できたとき
「先生が叱るとき」次の内容を伝えます。
(1)物をかくしたとき
(2)友だちの失敗やまちがいを笑ったとき
(3)仕事や学習でなまけ心に負けて、さぼったとき
(4)友だちをたたいたり、悪口を言って悲しませたとき
これは、最初の日に言うから、子どもたちの心に残るのです。これらはやがて、学級づくりの柱になっていきます。
3 教師からのメッセージ
4 楽しいゲーム
教師がリーダーになって遊びをリードすることで、遊びを伝え、遊び方を教える機会にもなります。
それくらいで、あっという間に30分が過ぎてしまいます。
〇保護者とつながるために、親の声を聞く
保護者は、自分の子どもを大事にしてほしい。何よりわが子のことを知ってほしいという強い願いを抱いています。
そこで私は始業式から三日目くらいに、親の声を聞くために、次のような用紙を保護者に渡します。
「子どもの指導は、一人ひとりのことを知ることから始ります。そこで、お子さんのことについて、できる範囲で情報を頂ければと思います」
「よいところ、印象に残っている出来事(喜び、大変だったこと、病気などで心配したこと)、こんな指導をしてほしいこと」
を、書いてもらうようお願いします。びっくりするほど親は書いてくれます。
〇子どもが起こした事実からルールをつくっていく
私の場合は、ルールは強制するのではなく、子どもが起こす事実からルールをつくっていくというのが原則です。
子どもたちが生活していく上で実際に体験した困ったことをルールにしていくのです。
もう一つ大切なことは、クラスの子の半数以上が賛成すれば、ルールを変えることができるようにすることです。
〇ゲームを楽しめる心をつくる
ゲームは最初、子どもたちはなかなか楽しめない。負けるといじける、すねる、泣く、ズルする、ズルした子を攻撃する、などトラブルが起きてしまいます。
私は、すきまの時間を使って、子どもたちにゲームをしてあげます。そのとき必ず約束をします。
教師「これからゲームをするけど、負けてもすねたり、いじけたり、泣いたりしない?」
教師「ズルはしない?」
子ども「しない!」
そういう約束をして、ルールやマナーを教えながら、教師がリーダーになって楽しいことを積み重ねていきます。
教師がゲームを通して身体を開け、自分のリーダー性を鍛えていくことは大切なことです。
例えば、ジャンケンゲームは、子どもたちの目を教師に集中させることができます。なぞなぞを出して、答えを班で相談させたりすれば、班会議の練習にもなります。
〇子どもと遊び、子どもを理解していく
子ども一人ひとりの変化と子ども同士の変化をじっくりと見ていく必要を感じています。
子どもは授業中と休み時間とで、関係性が大きく変化します。子ども理解のため、4月にじっくりと子ども同士の関係を観察します。
休み時間の子どもの様子を、子どもたちと一緒に遊びながら観察します。遊びをリードしている子、孤立しがちな子、一緒に行動している子などを発見していくのです。
もう一度、意識的に子どもと遊ぶ時期は、夏休み明けの9月です。夏休み明けというのは、子どもが変化する時期だからです。
〇困ったときは、周りの子どもたちに聞く
特に重い課題を持っている子がいて、対応に困り果てたときなどは、周りの子に聞くとよい。子どもたちは幼稚園から一緒ですから、友だちのことはよく知っています。
〇早めに家庭訪問する
課題を抱えている子に気がついたら、早めに家庭訪問をして親とつながるとよい。
親から話を聞くことで、子どもの別な一面が見えて、その子との出会い直しができます。
親の子育てをねぎらいながら、この子をどうしたいと思っているのか、その願いを聞きながら、いっしょに子どもの課題に取り組んでいく、そういうことが大切かなと思います。
(斎藤 修:1953年福島県生まれ、元千葉県公立小学校教師、全国生活指導研究協議会常任委員)
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