授業の名人に必要なのは才能やセンスではない、ではどうすれば授業名人になれるか
授業の名人と呼ばれる教師はたくさんいます。しかし、最初から上手だったはずはありません。では何が、名人の域に達するか、凡庸な水準に留まるかを分けるのでしょうか。
実際、新任早々、独創的な授業を生み出す教師、動物的な勘で子どもの気持ちをつかんで放さない教師がいます。しかし、そういった教師はごくごく少数です。
ごく普通の才能なりセンスしか持ち合わせない教師が、そこそこの名人になることは十分可能であると思います。
私は仕事上、数多くの授業の名人に接してきました。センスがよい、才能を感じさせる教師も少なくありません。しかし、それだけに頼って名人になれたわけではありません。
それどころか、若いときは、むしろ不器用な方であった。子どもたちとの関係もギクシャクして困ったという教師も少なくなかった。
私も授業が上手ではなかった。どうすれば少しでもいい授業ができるようになるのかを知りたくて、名人と呼ばれる教師を訪ね、全国を歩き回りました。
いったい何が決めてになったのでしょうか。
各人各様なのですが、授業の上達のために「継続して取り組んできたことがある」ということです。例えば
(1)毎日、クラスの子一人ひとりに何をしてやれたか考える
初任校の校長から
「放課後、教卓のところに座り、子どものいない机に一つひとつ目を落としては、今日はこの子はどうしていたか、自分はこの子に今日何をしてやれたかを考えなさい」
と教えられたといいます。
それを20年間、授業のある日は1日も欠かさず実行した。
最初のうちは、思い出せない子がいるものです。申し訳ないという気持ちになります。明日は、まずその子に目を向けようとします。
すると、これまで見過ごしていたその子ならではのよさ、健気さ、悲しみといったものが、ひたひたと感じられてきます。
そうして、自分の何が問題か、どこをどうすればよいかも見えてくる。そのことを懸命に思案していく毎日になります。
(2)教材を集める
授業づくりに悩んだあげく、教材の重要さに目覚め、毎日、教材の材料となるスクラップづくりに励みました。
新聞や雑誌を丁寧にながめ、資料やパンフレットなどを集め、おもしろそうなものを、切り抜いてノートに張り付け、いつでも見られるようにしておくのです。
実際に教材として使えるものは少なく、何年後になるものもあります。
そうやって、日頃からネタ集めをしておくからこそ、いざというときにいい着想が浮かび、ぴったりの教材を子どもに手渡すことができるのです。
目を見張るような、すばらしい教材と、それに支えられた授業が一日にして成るものではないという、当たり前の事実を、私たちは思い知らされるのです。
(3)授業記録を吟味する
先輩にすすめられて、折りに触れて自分の授業を録音し、授業記録を丹念に吟味してきました。
取り組んだことのある教師はわかると思いますが、指示が不適切であるとか、説明がわかりにくいといったことに気づくのは序の口です。
子どもの発言の意図を誤解して板書した時など、すまないことをしたと謝りたい気分になるものです。
授業中のあの子の発言は、このように受け取ったが、今思い返してみると、違っていたのではないか、という気づきが生じることがあります。
教師はどうしても、自分が思い描いた流れを中心に据え、個々の子どもの発言を受け止めがちです。子どもの発言をもう一度、吟味する必要があります。
何が問題であり、どうすればよいかも、突き刺さるほど、感じるものです。
だからこそ、二度とそのようなことがないようにと、痛みを力に変えながら、謙虚な気持ちで研鑽を積むしかありません。
あなたが教師であるなら、このような取り組みを毎日続ければ、確実に教師としての力量を向上させていけるに違いないと悟るでしょう。
名人の域に達するか、平凡な水準に留まるかを分けるのは、たった一つでもいいから、こういった着実に成長できる取り組みを見出し、迷うことなく誠実に継続してきたか否かです。
「継続は力なり」です。それ以外の道はありません。その道を淡々と歩みさえすれば、誰でもそこそこの名人になれると、私は確信します。
名人と呼ばれる教師たちに何か特別な秘密など一切ありません。
(奈須正裕:1961年徳島県生まれ、国立教育研究所室長、立教大学教授などを経て上智大学教授。専門は学校教育学 教育方法学等)
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