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保護者と会話する、共同して育てる、気持ちを知る、懇談会を成功する、にはどうすればよいか

 保護者と会うのが苦痛だという教師が多い
 若い教師のなかには、保護者と会うのが苦痛だという人がかなりいる。
 教師が自分の親に抱く感情を保護者にむける傾向がある。
 父を怖がっている男教師は父親に低姿勢になるだろうし、父を憎んでいる男教師は、父親につっけんどんになるだろう。
 父を好いている女教師は、父親と親しく話せるが厳しさに欠けるのが難点である。
 母を恋うる気持ちの強い教師は母親には愛想がよく、保護者に好かれる率が高い。しかし、指導的発言ができなくなる。
 こういう現象がおこるのは、若い教師が自分はまだ子どもだと思い込んでいるからである。
 教師が自分はまだ子どもである、世間知らずであるなどと自分を弱小視しないでもらいたい。若い教師は、稚心を去り、大人としての言動を早くおぼえてほしい。
 稚心を去って、まずすることは、預かっている子どもたちの教育を親と一緒に共同で担当するクラスのリーダーを勤めればよいのである。
 例えて言えば、教師は医師で、親は看護師である。医師だけでは治療はできぬ。看護師が脈や体温を測定して医師に報告してくれないと、医師は判断のしようもない。
 看護師が医師の治療方針に従ってくれないと看護の効果もあがらない。
 看護師の中には医師よりも年長者はざらにいる。医師より症例体験の豊富な人もざら。しかし、それでも医師には医師の役割がある。それと同じである。
 保護者と共同して子どもを育てるには
 保護者と共同戦線をはるには、その子の教育方針について意見の一致をみなくてはならぬ。そのためには、教師と保護者の「目標・方法・価値観など」ができるだけ似ていなければならぬ。
 したがって、教師は自分の考え(目標)、方法、子どもの行動観察の結果、自分の価値観(叱る・ほめる基準)を保護者にオープンにする必要がある。
 一方、保護者にもこのことについて、どんどん語ってもらわねばならぬ。例えば、子どもについて何を知っているか、どんなときに子どもを叱っているかなど。
 ぴたりと意見が一致しないこともある。そこで納得できる線を探すことになる。意見が合わないとき、保護者に憎まれることがある。こういうときは、一時引くのがよい。
 多分、保護者が教師を好きになれないことでもあるのかな、と考えるのがよいと思う。そして、初めからもう一度、関係をつけ直すのがよいと思う。会話や雑談からやり直すわけである。
 保護者との会話
 保護者となるべく抵抗をおこさせない会話のしかたがある。例えば
(1)
保護者の自発性を促す
「〇〇してください」と言わず
「このことについて、お母さんができそうなこと、してみたらいいんじゃないか、というようなことはありませんでしょうか」
「私は学校で〇〇をしばらくやってみようと思っているんですが」
と、保護者の自発性を促す方法である。
(2)
成功事例、失敗事例を語る
「もっと、子どもを可愛がってやってください」と言わず
「あるお父さんが、寝る前に必ず子どもにマッサージをしてやったそうですよ」
「そしたら、子どもが、ぼくもたまにはお父さんにマッサージしてあげるよ、言いだして、だんだん仲良くなって、今、親子でラーメン屋をやっているはずです」
と事例を示すのです。
 保護者への連絡
 保護者との連絡で、気をつけたいこと。
 あるとき、私にきつく言われ、しょんぼり立ち去る中学生がいた。私は、その生徒が帰宅する前に保護者に電話で状況を説明し
「今日、ちょっと落ち込んでいるかもしれませんが、しばらく様子を見てください」と、先に手を回しておくとよい。
 生徒によかれと思ってしたことでも、その真意が伝わらないとかえってマイナスで、不用意なトラブルがおこる。
 保護者の気持ちを知る
 子どもが今度の先生はいい先生だと喜べば、親もその教師に好感をもつようになる。
 子どもがいちいち親に報告しなくても、親は子どもの非言語的表現のなかから、折に触れて教師に対する感情や評価を察知するものである。また、友だちの親から伝わってくることもある。
 親が自分の子どもを批判して悪口を言うことがある。同時に、親は子どもに愛情ももっているのである。教師が調子に乗って「たしかに、そうですね」などと同調しないほうがよい。
 まず、教師は子どものよい点をほめることから始めればよい。ほめてから、改善すべき性癖なりに行動に話を移す。
 例外的に悪口ばかりで愛情のない親もいる。多分、親が自分自身を嫌悪している場合である。自己嫌悪の強い人間は他者嫌悪も強い。
 教師は心理学の専門家ではないが、せめて保護者のパーソナリティのどこに問題があるかくらい、読み取れるほど、カウンセリングの勉強をしておくとよいと思う。
 保護者懇談会
 保護者懇談会といっても、保護者が活発に討論に参加してくれないから、教師が一人独演会で座をもたせようとすることがある。
 私の教え子で保護者懇談会に成功している教師がいる。その方法は
 まず、すべての机を教室の端に寄せて、教室の真ん中にダンスができるほどのスペースをとる。
 保護者全員その空間を自由に歩きまわり、お互いに握手する。教師もこれに参加する。
「私は担任の〇〇です」「私は△△です」
などと名乗りながら握手する。初めはてれくさいが、すぐ慣れてくる。
 すんだら二人一組になり、一人3分間、時間をとる。その3分、相手に家庭教育のことなどをどんどん聞く。
「テレビは何時間見ていますか」「勉強しろとよく言いますか」「どんなとき叱りますか」「どんなときほめますか」
など、どんどん聞く。3分後に交替する。聞いた人が聞かれる立場になる。ねらいは、どんな思いで子どもをしつけているかを知ることである。人のやり方を参照できる。
 このあと、二人一組を二つ合流し四人一組にする。子どものしつけで困っていることを、一人一つずつ語るという課題を出す。一人3分もあればよい。
 このときに守るべきルールは、話し合ったことを自分の子どもに洩らさないことである。
 理由は、他の子どもと比較することになるから、劣等感が生じる。それと、子どもが「お母さん、ぼくの〇〇のことを人にしゃべったでしょう」と、親子のトラブルに発展することがある。
 したがって、始める前に、このことを教師は保護者に徹底しておく必要がある。
(
國分康孝:1930年大阪府生まれ、 東京理科大学教授、 筑波大学教授、東京成徳大学副学長などを歴任。日本カウンセリング学会会長、日本産業カウンセラー協会副会長などを歴任し、日本教育カウンセラー協会会長。構成的グループエンカウンターを開発した)

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