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子育てや教育のキーワードとは何でしょうか、思春期の子どもに具体的にどう接すればよいか

 人間が生きていくうえで、甘えは絶対必要なものです。決して甘えるなと言ってはならない。
 甘えは、ひとことで言うと、相手の愛情を求めることです。
 甘えが満たされるとき「自分は愛されている」と感じます。「自分は愛される価値のある存在なんだ」と感じます。
 相手に対する信頼と自己肯定感が育ちます。それが安心感につながります。
 自己肯定感は、
「自分は大切な人間だ」「生きている価値があるんだ」「自分は自分でいいんだ」という気持ちのことで、子育て、教育のキーワードで、これ以上大切な言葉はありません。
 この土台があって初めて、しつけや学力が身についていきます。
 相手を信じることのできる人は、思いやりを持ち、深い人間関係を築くことができます。
 甘えが満たされないとき、相手に怒りが生じ、甘えさせてもらえるだけの価値のない人間なんだと思います。それが続くと、周囲に対する不信感や怒りとなり、自己肯定感が低くなります。
 そういう人は、相手を信じることも、甘えることもだきないので、攻撃的になったりしやすく、高じると、さまざまな問題行動や、心の失調となって表れてきます。
 どうすればよいのでしょうか。
 話を聴いてもらうことで、子どもは、親に甘えたい気持ちが満たされ、安心します。また、小学生の間なら、抱っこや、スキンシップなども、まだ十分、有効です。
 少なくとも小学生の間くらいまでは、十分甘えを受け止めてかまいません。
 十歳以降は、親離れしていく時期で、依存の対象は親から友だちに変わってきます。それでも、親の存在は大切です。
 子どもはさまざまに裏切られ、傷つきます。そんなとき、親はしっかり受け止めてやってほしいと思います。
 反抗は自立のサインです。子どもは、批判的なことも口にし、自己主張を始めます。
 そういう話を、しっかり聴く、ということです。子どもはよく見ています。正しいことを、きちんと認めることで、子どもも、自分の感じ方や判断に自信が持てるようになるのです。
 小学校高学年以降、思春期に入ると、自立は、反抗や親への批判、攻撃という形を取ってきます。
 反抗や批判をしてくる、ということは自立がうまく進んでいるということです。子育てが間違っていなかった、と喜んでほしい。
 反抗期が激しく出る場合があります。それはたいてい、それまで反抗ができず、よい子でいたか、あるいは抑えつけられていたため、思春期に一気に爆発した場合に多い。
 そういう場合は、付き合うのに、相当、苦労と忍耐が必要です。
 では、子どもをどのようにして自立させればよいのでしょうか。
 子どもに安心感を与え、自信をもたせる、ということです。
 子どもは自分で悩んで、考えて、成し遂げることで自信を持つのです。
 人から言われた通りにやって、成功しても、子どもの自信にはなりません。ですから、できるだけ手出し、口出しは控えたほうがよいのです。
 子どもが失敗したときは
「ここまで、よくできたじゃないか。ここまで、できただけでもりっぱだ。次は、きっと成功するよ」
 と言われると、自信を回復します。
 思春期にある子どもたちに、どう接していけばよいのでしょうか。
 ひと言でいうと「子どもの揺れに付き合う」「子どものあとをついていく」ということです。子どもに指示、命令をしない。
 子どもの前に立って「あっちへ行け」と指示しない。手を引っ張らない。背中を無理に押さない。先回りしない。ちゃんと歩きだすまで「待つ」ということです。
 もう一つは「見放さない」という態度です。
 子どもに振り回されて「もう知らん、勝手にしろ」と突き放さない。
 子どものあとをついていって、子どもが振り返ったら親が「大丈夫だよ」とうなずいてくれるという関係です。
 ただし、どこへ行こうと「分かったよ」と、ついていくことではありません。
 本当に危ない所に向かっていくときは、きちんと止める。これも「見放さない」ということです。
 思春期に具体的にどう関わればよいのでしょうか。
 まず大切なのは「親が肩の力を抜く」ということです。
 思春期になるまで育ててきました。たとえ親がいなくても、これから何とか生きていくことはできます。ですから、子育てで一番大変な時期はもう過ぎました。
 もう中学生になった子に、いまさらああしろ、こうしろと言っても、そんなに変わりません。
 ここまできたからには、なるようにしかならん、といった現実を認めてしまって、肩の力を抜くということです。
 親が肩の力を抜くと、親が楽になります。親が楽になると子どもも楽になります。
 そうすると、険悪な家庭の雰囲気も次第に和んで、笑いが出るようになります。
 せめて家庭だけでも、ほっとしたいと、みんなが願っているのではないでしょうか。
 思春期に親として出来ることは何でしょうか。
 一番簡単で、大切なことは「話を聴く」ということです。
 思春期の子どもはあまり親に話をしてきません。しかし、ごくたまに、親に話を聴いてほしいと思うことがあります。そういう時には、親がいくら忙しくても、しっかり聴くということです。
 また、親に頼み事をしてくることがあります。よほどの事情があるのですから、そういうときは、親は徹夜をしてでも、真剣に応える必要があります。
 かんじんな時に、親に拒否されたり、無視されたりすると、もう親を当てにしなくなり、相談もしてこなくなります。
 子どもの心が順調に育つために一番大切なことは、自己肯定感を育むことです。そのために大切なことは、子どもを「ほめる」ことです。
 思春期の子どもでも、心にスッと入るほめ言葉は「ありがとう」です。
 上から目線でほめられると思春期の子どもはイライラします。ところが、感謝の言葉である「ありがとう」は、人間として対等です。
 自己肯定感を育む「ありがとう」というほめ言葉は、さまざまな人間関係で苦しむ、思春期の子にこそ、必要なのかもしれません。
(
明橋大二:1959年大阪府生まれ、精神科医。真生会富山病院心療内科部長。専門は精神病理学、児童思春期精神医療。NPO法人子どもの権利支援センターぱれっと理事長)

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