授業がうまい教師と授業がへたな教師は、何がちがうのでしょうか
人間性にも優れ、技術も優れている人が「プロ教師」である。
技術もなければ、人間性もないというのは、指導力不足の教師である。
授業がうまくいかない教師は
「子どもの声や表情、つぶやきなど」の「子どもの反応を集約・焦点化する」という「対応の技術」がへたな教師である。
授業がうまいということは
「対応の技術が優れている」ということである。
「よい授業」というのは、全体的に「ゆとり」がある。ゆったりしているように見える。
それなのに、肝心なことは、しっかりとおさえている。
教師の表情も、スマイルが多く、パフォーマンスも適当にあり、話術もうまい。
教師の人間性といってよいものが、どうしても授業に出てくる。
教育の技術というのは、最後は、教師の「人間性」に集約されてこそ生きて働くものになる。
ものまねでは、うまくいかない。人間性も同時にみがいていく必要がある。
授業で大切なことは
1「これだけは何としても教えたい」という「ねらい」を鮮明に持つ
しかし、これを教えてはならない。
2 子どもを「学びたい、追及したい、調べたい」という気持ちにさせること
3 教材7分に腕(技術)3分の授業
1) 教材
教材のよしあしが授業の死命を制する。
「よい授業」は「教材がよい-子どもが熱中するもの」を提示している。これは鮮明な事実である。
私が取り上げた教材は、つぎの5つのどれかに入るものであった。
(1)固定観念をひっくり返す教材
(例)大井川に橋をかけなかったのは「幕府の政策ではなく、橋をかけさせなかった人がいたからだ」という考えを提示し、固定観念をひっくりかえす。「教科書に書いてあることが違うのか?」と子どもたちの反論はすさまじかった。
(2)意表をつく教材
(例)大名行列の大名のかごかきは、必ずヒモを横か後ろにたらしていた。これはなぜか?
大名にお尻を向けていいのは動物だけで、ヒモをさげて動物に見立てたのだ。「人間を何と思っているのか」と、子どもたちの猛烈な反論で盛り上がった。
(3)新鮮な出会いをさせる教材
(例)江戸時代、どうして午前4時などという早朝に出発したのか?
これは、早く宿に入り、相部屋だからよい場所をとり、一番風呂に入るため。これも反論がすさまじかった。
(4)思考のあいまいさをつく教材
(例)新橋~横浜間の列車は「3分の1は海の中を走っている」と言うと
子どもたちは「そんなバカな」といいながら絵を見直す。
(5)事実を確かに見させる教材
(例)一寸法師のモデルは誰か?
「モデルがいたの? そんなバカな」といいながら、子どもたちは必死に調べるのである。
このような教材の提示によって「追及の鬼」を育ててきた。原点は「教材の面白さ」である。間口は狭く、奥行きの深い教材である。
2)腕(技術)
教材がよいとよい授業ができるかというと、そうとも言えない。「3分の腕(技術)」が必要である。
3 最低限の授業の技術は
(1)発問・指示
「発問・指示が鮮明である」ということがよい授業の大切な条件である。
発問のしかたによって、授業は全く変わったものになる。
(2)板書
つまらないことを板書していては子どもは面白くない。ほれぼれするような「芸術的な板書」をせよ。
(3)資料活用
よい授業には「わかりやすくて、問題をはらんだ資料が提示されている」ということである。
資料収集、作成、提示の技術がものをいう。
「見せたいものは、なるべく見せるな」といわれ、見せ方が大切な技術である。授業の上手なひとは、さり気なく、周到に準備して提示している。
(4)話し合い
(5)話術、表情、パフォーマンス等
4 人間性(人間力)
5 愛をもって、子どもに向き合う
しかし、技術のない愛は力を発揮できない。
6「めあて、見通し」をはっきりもって研修する
(1)どんな状況のとき
(2)どんな内容を
(3)どのように活用すべきか
と、いうことをつかんでおくことである。
6 力のある教師
子どもの状態に合わせ、クラスの実態に合わせて
(1)ふさわしい言葉をかけ
(2)ふさわしい指導を行い
(3)ふさわしいほめ言葉をかけ
(4)ふさわしい方向性を示す
教師であろう。
今の社会を見ると、人間性より技術の優れている人を腕があると見ている。
しかし、私の考え方は、人間性の方に重点を置きたい。人間性の方を技術より上に置きたい。
私の考えは、人生最大の財産は、ユーモアのセンスであり、人間性そのものである。
(有田和正:1935-2014年、福岡教育大学附属小倉小学校、筑波大学付属小学校,愛知教育大学教授、東北福祉大学教授、同特任教授を歴任した。教材づくりを中心とした授業づくりを研究し、数百の教材を開発、授業の名人といわれた)
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