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学級が指導困難になり親の抗議で新任教師が自殺し、裁判で公務災害に認定された事例とは、どうすれば防ぐことができるのでしょうか

 私が何人かの自殺されてしまった教職員の事例を見てきた中で感じるのは、同じ学校の職場がつちかうべき「共同性」の大切さです。
 窮地に陥っている教師がいたとき、親身になって助けられなくてもいい、助けられるような人のところに、きちんとつなぐというバトンリレーが働いているかどうかが重要です。
 それさえも無くなったときに、職場にギスギス感が漂い、教師が孤立感と絶望感に立ち尽くしていても、職場がそれを見殺しにするという最悪の事態に陥りかねません。次のような事例があります。
 2004年9月に、静岡県の小学校4年の担任である新任の女性教師が、自らの車の中で灯油をかぶって焼身自殺をしました。教師になってわずか半年後のことでした。
 授業がうまくいかない、指導が難しい子どもが何人もいる。それに、上司や先輩教師たちからの激しい叱責、職員室の希薄な人間関係が、孤立へと追い込んでいきます。
 職場の同僚教師は言います「隣の教師の悩みを、この1年知らないこともある」「悩みを打ち明ける時間もない」と。
 相手も忙しいから、自分の相談を持ちかけるのは申し訳ない、という気持ちが働き、距離ができてしまうのだろう。孤独状態は、あっという間に孤立感に変化する。
 自殺した教師の携帯には「子どものことは大変だし苦労するけど、一部の先生の言葉や態度に傷つく。苦しめられる」と残されていました。
 子どもや保護者対応に悩んでも、職場の雰囲気さえよければ、言葉が交わされ、会話も生まれます。
 新任の女性教師は日々の対応に困惑する中でうつ病を発症していました。事件の前日に、子どもの母親からの指導に対する抗議の手紙を受け取り、その翌朝に自殺しました。
 両親は娘の死を無駄にせず、若い教師が誇りと安心をもって働けるような状況に職場を見直す必要があると、公務災害認定を申請しましたが、棄却されたため静岡地裁に提訴しました。
 判決は、自殺について本人の性格上の脆弱性を否定し、当初から子どもの問題行動が相次ぐ中で、職場の支援体制が不足していたことを指摘し「公務災害であった」とする勝訴判決でした。
 判決では
「着任してわずか1か月半の期間に、数々の問題が解決する間もなく、立て続けに生じた点に特徴がある」
「状況が改善される兆しもなかったから、新採教員には緊張感、不安感、挫折感を継続して強いられ、強度な心理的負荷を与えた」
「こうした状況下では、当該教員に対して組織的な支援体制を築き、他の教員とも情報を共有した上、継続的な指導・支援を行うことが必要である」
「にもかかわらず、学校側は問題の深刻さを認識せず、また疲弊し続けていたことは十分察知できたにもかかわらず、情報が、周囲の他の教員と十分な支援が行われていたとは到底認められない」
として公務災害と認定しました。
 教師の病気休職の第1位は精神性疾患で大半はうつ病です。さまざまなストレスが精神性疾患の背後にあります。
 仕事の多忙化、人間関係のストレス(子ども対応、保護者対応、職場の人間関係)が、いまの学校の教師に覆いかぶさってきています。これに不眠状態が加わると事態は一変します。
 睡眠薬を飲んででも寝ることは、決して悪いことではありません。
 精神科の医師は「グチをこぼす」ことが重要だと言っています。先生方にお願いです。グチをこぼす場を3つ作ってください。
(1)
家族
 親でも、奥さんでも旦那さんでもけっこうです。家族が聞いてくれるだけで、どれだけ心が晴れるかが、わかります。
(2)
職場の同僚
 仲が良い、悪いなど様々あるでしょうから、3~4人でもけっこうです。飲み屋さん等で話をすることも決して悪くはありません。
 ただし、周りに他の誰かいないかをよく確かめてから話をするようにします。
 他人に話をするときは、コトのあらすじを整理しなければいけません。それが大事です。
 すると「本当は、あのお母ちゃんの思いは、ここに有ったんじゃないかな」とか「あの父ちゃんの願いは別のものだったのかもしれない」と気づくことがあるのです。
(3)
職業の違う友人
 飲み屋の大将、美容院のママさんなど、気のおけない関係を2,3人つくっておくことです。するとこう言ってくれます。
「先生も大変やな。でもな、あんたの悩んでいること、私らから見たら、どうでもええことで悩んでいるように見えるで(笑い)
 そうです、自分の姿は自分ではわかりません。鏡となるものを置いてこそ、はじめて自分の姿が見えるのです。
 先生、よく寝てください。多少教材研究が中途半端でもええじゃないですか。
 朝、子どもたちに「〇〇くん、おはよう! △△さん、元気?」と、はつらつとしていること、それが大事です。
 学校に登校して、先生方が元気じゃなかったら、誰が大人になろうと思いますか。先生方は大人のモデルです。未来への希望の光なのです。
 教師としての最大の資質は「はつらつとしている」ことです。
(小野田正利:1955年生まれ、大阪大学教授。専門は教育制度学、学校経営学。「学校現場に元気と活力を!」をスローガンとして、現場に密着した研究活動を展開。学校現場で深刻な問題を取り上げ、多くの共感を呼んでいる)

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