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クラスが荒れ、授業中に私語する子どもたちが、集中して取り組む授業をすれば「子どもたちが何のために学校に通って学ぶのか」に応えることができる

 クラスが荒れ、授業中おしゃべりしたり、マンガを読んでいる子どもたちも、集中して取り組むような授業はできないものか。そんな思いで取り組んだのが、つぎの授業です。
 荒れていた子どもたちも、全員が集中して学習ができました。
 授業の始めに、家から持ってきた手さげ袋をみんなに見せながら
「実はこの袋の中に、授業で使うものが入っているんだけど、何だろう?」
と切り出すことから授業を始めました。
 すると、かなりの子どもたちは目を、袋に集中します。先生は何を持ってきたんだろうと、興味しんしんなのです。マンガを読んでいた子も、うれしいことに私の方へ目をむけているのです。
 子どもたちは、頭の中で想像します。ある子は「算数の時間だから、〇〇だろう」と考えるだろうし「あの袋に入るものだから、△△じゃないか」というように予想する子もいます。その内面の活動が集中(内的緊張)を生みます。
 次はどうなるか興味が湧くようなところで、「間」をとることによって、イメージがぐーんと広がっていくものです。
「じつは、これなんです」と言って、最初に白い皿のように見える容器を見せました。
 すると、子どもたちから「植木鉢などの受け皿」じゃないか「プリンの容器」「ゼリーの容器」など、いろいろな意見が出されました。
 底の模様を見せると、知っている子がいて「それはカマンベールチーズ」の容器だと、すぐ当てました。
 次に紙袋から取り出したのは、新聞紙に包んだものでした。提示の仕方も、ワンパターンではなく、変化をもたせるようにします。
 子どもたちは、もちろん何かわからないのですが、大きさから推理していきます。人間ってすごいものです。どのくらいの大きさかがわかれば、予想して当ててしまうのですから。
子ども:「湯飲み茶わんでしょ」
教師:「近いけど違います」
子ども:「コップ」
教師:「とっても近いです」
教師:「みんなのお家の人で、これをよく使う人がいるんじゃないかな。先生もこれを使って飲むのが好きです」
子ども:「グラス」「ワイングラス」
教師:「そう、ワイングラスだよ」
と言って、新聞紙からワイングラスを出します。
 どの子も知的好奇心が高まり、集中して授業に参加しています。当たった子は、うれしそうにニコニコしています。
教師:「次のものは、重いものなんだけど」
と言いながら、紙袋に手を入れて重そうにしていると、
子ども:「先生、それつけものの重石でしょ」
という声。
教師:「確かにつけものの重石のかわりにもなります」
と語ると
子ども:「鉄でできているのですか」
という質問が出されました。
教師:「そう」
と言ってうなずくと
子ども:「それは、筋肉を鍛えるダンベル(アレー)でしょ」
と見ぬいていきます。
こんな感じで木で出来ている花瓶も、子どもたちは当てていきました。
 この四つのものを黒板の前に並べ、その断面図をそれぞれのものの上の方に板書しました。
教師:「じつは、これらのものに共通して言えるものがあるんだけど、何だろうか?」
と言うと、共通ということがピーンとこないような表情をしている子どもたちが、かなりいるのです。
 こういうときは、子どもだけではなく、教師も学びを深めるときです。
 そこで、共通ということは、どういうことかを、とらえさせるために、とっさに思いついたのは、手もとにあった「ホッチキス」と「のり」と「サインペン」の三つでした。
 あらかじめ準備していたわけではないので、教室の机の上にあるものを使う以外に方法はなかったのです。この三つのものを見せて話し合うことにしました。
教師:「この三つはそれぞれちがうけど、共通するものの、似ている点や同じ点があるのでしょ」
と質問すると、子どもたちから出てきたのは「文房具」「材料がどれも、プラスチックでてきていることが同じ」だという意見。
教師:「材料に注目したところがいいね」
教師:「ノーベル賞を受賞した湯川秀樹という物理学者は、物事の違いの中に共通なものを見つけることが、創造にとって重要だという意味のことを言っているけど、みんなも、一瞬のうちにとらえてしまうから、すごい能力だね」
とコメントすると、子どもたちはうれしそうな表情をしています。
教師:「ほかにあるかな?」
子ども:「先生、使えばどれもなくなる」
教師:「さすがです。量に注目したところがいいね」
というような、やりとりをするなかで、子どもたちは「共通」ということを、だんだん理解していきました。
教師:「それじゃ、今黒板の前に並べたものに共通しているものはなんだろう?」
と問いかけると、今度はかなりの子どもたちは気がついたらしく、すぐ手があがりました。
子ども:「真ん中に線を引くと、左と右の形が同じになる」
という意見がだされました。そのうちに一人の子が
子ども:「同じ形にならない場合がある。中心を通らないような線を引くと、同じ形にはならない」
教師:「そうだね、ある考えが成り立つ場合を考えることも大切だけど、その考えが成り立たない場合の条件を考えることも、とっても大事なんだよ」
 子どもたちは鋭い感性で、大事なことをぽんぽん見つけていきます。
 その考えがどんなに重要な意味をもっているかを、ひとこと語ることで、子どもたちは対象を深く見つめる視点を自然に学んでいきます。
教師:「今みんなが発見したように、左と右、あるいは上下が同じ形になるようなものを線対称な形といい、この線を対象軸と言う」
ことを確認して学習を終わりました。
 子どもたちは、今日、線対象について学習することはまったく知らなかったのです。この日は、線対称の学習の第一時間目でした。自分たちの力で線対象を発見したことは、とってもうれしいことだったのです。
 いつも誰か集中しない子がいるものですが、この日は全員が参加した授業ができました。授業したなあという実感をもつことができました。
 推理し想像しながら、みんなで発見していくような授業は、子どもたちも大好きです。学習意欲に欠けるような子が、このように目を輝かせて学習する事実に、私たちは着目していかなければなりません。
 子どもたちは、知的好奇心が高まり、未知の世界との出会いがあるような学習には、むしろ飢えているのです。
 共同で学ぶことで、一時間前には想像もできなかった世界と出会うことができる。
 学級の友だちと対話・討論することで、自分も賢く人間としても豊かなになってきている。
 この実感の積み重ねこそが「何のために学校に通って学ぶのか」という問いに応える、道ではないかと思っています。
(今泉 博:1949年生まれ、東京都公立小学校教師を経て北海道教育大副学長(釧路校担当)、「学びをつくる会」などの活動を通して創造的な授業の研究・実践を広く行う) 

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