教師や学校に身勝手な批判や理不尽な要求をする保護者に、どう対応すればよいのでしょうか
中学校に入学して、保護者会に一度も出席しない親がいます。そのかわり個人面談を申し込んできます。そこで話されることは、教師や学校の批判ばかりで4~5時間は席を立ちません。
「いい子だったのに、この学校に来て悪くなった」
「まわりの友だちが悪く、それを指導できない教師や、その子たちの親に問題がある」
と言い始めます。
年度末には、次年度に一緒にしてほしくない子や、教科担任にしたくない教師を指名してきます。
この保護者と面談するのが、本当に気が重くなってしまいます。どうすればよいのでしょうか。
大変な思いをされていると思います。話はできるだけ聞くようにし、真摯な対応をされているのだろうと思います。
話し合いのルールを決めようとされたこともあるでしょう。けれども「私の話を聞かないのか」という、批判になって返ってきたのではないでしょうか。
自分の意向に添わない人間は敵であり、それ以外の方向を許さない保護者なのだろうと思います。
他の保護者と、どのようなトラブルがあったのかはわかりません。ですが、このような「身勝手さ」ゆえに反目し合うことになったのは容易に想像がつきます。
このような保護者が変化するための条件はあるのでしょうか。
この保護者の場合、相手の神経を逆なでして怒らせて「自分を世間の人は理解してくれないのだ」という確認をしているかのようです。
この保護者が、長年、時間をかけて身につけた、対人関係の振る舞い行動パターンのように思われます。
このような人を本質的に変化させる可能性はあまりありません。
この保護者自身が変化するためには、そのことについて困り、自分自身で変化をしたいと強く願わねばなりません。
そのうえ、その願いに応じられるだけの忍耐強い人がいて、その相手と信頼関係を築いた経験がなければ、変化は生じにくいのです。
このような条件が整うのは稀有なことだと思います。
それでは、どうすればよいのでしょうか。
その保護者を「治そうとするな、わかろうとせよ」ということです。
理不尽と思われる要求に、腹を立てないことです。そして保護者に「そちらが変われ」というメッセージを出さないことです。
基本中の基本ではありますが、要求に応じられるとは応じ、応じられないところは機嫌を損ねないようにしながら断ります。
一番の問題は、この保護者とのおつきあいに教師がくたびれてしまうということです。会うのに気が重たくなることです。これを何とかしたいものです。
「複雑な事情を抱えている人ほど、表現が屈折している」と、考えることです。
成育歴上、大変な思いをされてきていることも少なくありません。少なくとも、学校や教師との関係で、幸福な経験をされているとは思われないのです。
事情がわかれば、腹も立たなくなります。
この保護者がそのように表現せざるをえない事情、それがどこにあるのか、そこを教えてもらう心持になることです。
その保護者の子どもにも、気になるところがあると思います。
しかし、それを保護者に指摘し、家庭で考えてもらうようにしては、よい方向には変化していきません。
むしろ、お子さんの長所を見いだし、それを保護者に伝えることです。
また、お子さんに改善してほしい点については「現在、改善途上である」というかたちで伝えます。
例えば「最近、〇〇がなくなってきています。この調子でもっとよくなるとよいですね」
と、願いのかたちで伝えるとよいでしょう。
そのことが、お子さんによい刺激となって返っていくように思われます。
(小林正幸:1957年群馬県生まれ、東京都港区教育センター教育相談員、東京都立教育研究所相談部研究主事等を経て東京学芸大学教授。不登校を始め学校不適応、ソーシャルスキル教育、教育相談、教育技術を研究)
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