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荒れた学級を変えるには授業のとり組みが重要である、そのためには、みんなで知恵を出し合い、想像し、発見していく共同の学びの授業を創っていくようにするとよい

 荒れて集中できない学級では、静かにさせてから、授業をしようと思ってもだめです。
 授業をしながら、授業そのもの中で、集中するようにしていかないといけないのです。
 おしゃべりが止むまで待っていたら、いつ授業が始まるかわかりません。
 子どもたちも、授業の入り口で注意されたり、説教されたりすることは嫌なのです。そんなことをしていると、ますます授業にのらなくなります。
 子どもたちが深く学ぶためには、緊張が必要だと思います。
 その緊張を外からつくろうとしても、なかなか育ってはいきません。授業中の「きまり」をいくら作ったり、教師が怒鳴ったりしても、うまくいきません。
 授業で大事なことは、内的な緊張です。
「あっ、おもしろそうだ」「なぜ、そんなふうになるんだろう?」というような、内面の働きの中で、自然に自分自身で緊張をつくっていく「内的緊張」こそ大切だと思っています。
 この「内的緊張」を授業の入り口でグーンと高めていくことが、私たち教師の大事な仕事のひとつです。
 教材研究でまず大事なことは、いかに教えるということよりも、むしろ教師自身が授業で扱うことについて、どれだけ深く知り、どれだけ知的好奇心を高めることができるか、ということです。
 子どもたちが楽しく、おもしろく、深く学べるようにするためには、この教材研究が不可欠です。
 荒れる子どもたちが、授業で目を輝かすことができるかどうかは重要なことです。
「何のために、わざわざ学校に通って学習するのか」という問いに応えるような授業とは
「みんなで知恵を出し合い、想像・推理し、発見していく、共同の学びを創っていく授業」です。
 荒れた六年生の子どもたちに、私は次のような授業をおこないました。
 六年生の最初の授業は「日本における考古学の始まり」を扱いました。
 この一時間目をどのような授業にするかは、これからの一年間の学習にとっても重要な意味をもつものと思われました。この一時間が楽しければ、社会科の学習に対する姿勢が変わってくるはずです。
教師「1877年(明治10年)の6月18日のことです。横浜の港に一艘の外国船が着きました。この船には、どんな人が乗っていたでしょうか?」
子ども「外国人」「アメリカ人」「イギリス人」「外国から観光に来た人たち」「何か調べるために日本にきた外国人」
教師「実は、この船には、モースというアメリカ人が乗っていました。横浜の港についた動物学者(貝の研究)モースは、東京へ向かう列車の窓から景色を眺めていました。あるところまで列車がきたとき、ここは大昔の人びとの生活がわかるものが埋まっているはずだと思いました」
教師「モースが見たものは、いったい何だったんだろう?」
子ども「海」「魚」
教師「そういうものからは、大昔の人々の生活はわからないと思う」
子ども「貝がら」
教師「どうしてそう思ったの?」
子ども「大昔の人たちが食べた貝がらだから」
子ども「大昔の人たちが食べたものや、いらなくなったものを捨てたゴミ捨て場」
教師「そう、貝がいっぱい捨ててある場所なので、ここを掘れば大昔の人々の生活がわかるものが出てくるはずだと考えたのでした」
教師「そして、この年の10月、東京大学の教授たちといっしょに、モースはその貝塚を発掘したのでした」
教師「さて、実際に発掘してみたら、貝の他にどんなものが出てきたと思いますか?」
子ども「土器」
教師「そうです。土器もでてきました。土器はどんなことに使ったんだろうね」
子ども「食べ物を入れておいた」「煮たりするときに使った」
教師「他にどんなものが出てきたと思いますか」
子ども「魚や動物などの骨」「石でできた道具」
教師「そうです、石器も出てきたんです」
子ども「つり針」
教師「骨で作った針が発見されています」
子ども「人の骨」
教師「そうです。人骨も発見されているんです」
教師「その人骨がばらばらな状態で発見されたんです。モースはそれを見て、どんなことを考えたでしょうか?」
子ども「他の動物に食べられた」「殺されバラバラにされた」「人が人を食べた」
教師「そうです。モースは、発見された骨の多くは、真ん中ぐらいで折られているものが多かったこともあり、人が人を食べたのではないかと考えたのでした」
教師「モースが列車の窓から発見したこの貝塚は、大田区にある大森貝塚です。発掘によって、何千年も前の大昔に、人々が住んでいたことがあきらかになりました」
教師「この発見がきっかけで、日本においても、大昔の人々の研究が進んでいったのです」
 授業が進むにつれて、子どもたちの表情も変わってきました。
 全員が集中したわけではありませんし、発言も限れていましたが、子どもたちにも「学んだ」「楽しかった」という実感があったようです。
 最初は「社会科が嫌いだ」という子どもたちが圧倒的に多かったのですが、授業を積み重ねる中で「大好き」という子どもが多くなりました。
 楽しければ、深くかかわれば、子どもたちの学習の姿勢はぐんぐん変わっていきます。
(今泉 博:1949年生まれ、東京都公立小学校教師を経て北海道教育大副学長(釧路校担当)、「学びをつくる会」などの活動を通して創造的な授業の研究・実践を広く行う)
 

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