いまの若い教師の最大の不安は「保護者とうまくやっていけるか」です、どうすればよいか
いま若い教師の間では、ちゃんと授業を教えられる技量があるかどうか、子どもや教職員とうまくやっていけるかどうかより「保護者とうまくやっていけるか」が最大の不安材料になっています。
最初から保護者対応力を持っている新米教師はまれだからです。
保護者対応力は経験によって身につくことが多い。
学校現場での具体的なトラブル解決の臨場感の中で、また、職場の同僚性の発揮の中で、あるいは、教師自らが家庭を持ち子育てに関わる経験によって、はじめて身につくことが多いのです。
最初から保護者対応力を持っている新米教師はまれな存在にすぎません。保護者対応能力を、教師としての値踏みに使わないようにしてもらいたい。
学校現場では、苦情を受ける人は、実際に問題を引き起こした教師であり、
「〇〇先生の対応の仕方が悪いからこうなったんだ」
と、個人の問題ととらえられやすい傾向をもっています。教師個人が名指しで責められやすいという特徴があり、それがもっとも辛いといえます。
だから「トラブルを抱かえていることを他の人に知られたくない」という意識を生みだしやすく、周りが気づいたときは「傷が深くなっている」という状態が起こりやすいわけです。
企業の場合は、苦情対応が担当者の力量を超えてしまった場合は、別の人間に代わってもらうことができます。
しかし学校では、苦情を申し立てる保護者の側からすれば、学級で起こっていることは担任が対応するのが当然という意識があるため、担当者が交代するのは難しい。
そのため、学校では「相当深刻になってから」交代おこなわれることが多い。
交代するのは、続行不可能となり、担任を降りるとか休職という、極めて不幸な形となってあらわれることになります。
学校には、苦情対応を専門にしているプロはいません。教頭などが、それらに当たる場合が多いが、他の雑多な膨大な仕事を抱かえながらの同時並行作業です。
担任も同じで、ふだんの仕事と併せて、苦情対応をおこなわなければならないために、負担が強くなります。
それがさらに本業である教育指導に多大のマイナスの影響を及ぼしたり、注意力が散漫になるため、より悪循環に陥りやすいわけです。
この4年間で教育委員会に上がってくる保護者などからの苦情やクレームが、79件から25件に次第に減少している市があります。
その市は、教職員のスポーツ大会はあるし、宿泊を伴う職員旅行が残っています。
そのことと、苦情が減少したこととの間に相関関係があるかどいかは、調査をしないとなんともいえません。
ただ、トラブルが起こったときに、教職員を孤立させないようにする配慮の体制は、教育委員会の学校支援を含めて、整えています。
少なからず、どこかで誰かとつながっているという気持ちが、それぞれの教職員の頭の片隅にあるかどうかが、一つのわかれ目のように思います。
私は講演先で
「一見すると、ムダと思われた時間と空間がどんなに大事なことか。皆さん方の職場に、宿泊を伴う職員旅行は残っていますか」
「一学期に1回でもいい。汗を流し、笑いあうようなバレーボール大会、ソフトボール大会・・・残っていますか」
「職場の同僚性や共同性は、汗と笑いの中からしか、生み出されないのです」
と、訴えかけています。
手探りでその日その日を、なんとか乗り切っているのが若手教師かもしれません。
近くに頼れる先輩教師がいて、そういった人たちとうまくコミュニケーションができていますか。
ふたんから職員室に笑い声があふれていますか。
つらいこと、しんどいことが起きても「なんとかなる。みんなでやろうぜ」という声がかかりますか。
若い教師は、元気いっぱいに子どもたちと向き合ってください。先生たちが元気でないと、子どもも楽しくありませんし、保護者も不安になります。
(小野田正利:1955年生まれ、大阪大学教授。専門は教育制度学、学校経営学。「学校現場に元気と活力を!」をスローガンとして、現場に密着した研究活動を展開。学校現場で深刻な問題を取り上げ、多くの共感を呼んでいる)
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