学級の荒れが起こるのは、どんなときなのでしょうか
学級はなぜ荒れるのでしょうか?
はっきり言って、教師の力量不足が8割くらいでしょうね。多くの場合、いわゆる子どもとの関係づくりの失敗が大きいのです。
教師と子どもとのつながりができていないのです。なぜ、できないかというと、一つは、教師が子どもに対する武器を持っていないからです。
子どもたちをひきつけるもの、子どもたちが尊敬できるもの、そういうものが何でもよいから教師にあると、子どもは教師を一目置いて見ます。
サッカーが上手でも良いし、走るのが速いでも良いし、絵を描くのが得意なのもありです。
そういうものが一切なしで子どもたちの前に立って、ああしろ、こうしろと命令を繰り返しても、子どもたちにはひびいてきません。
次に、教師と子どもの間にコミュニケーションがとれないからです。コミュニケーションは、授業中にもあるし、日常のありとあらゆる機会にも存在します。
この日常的に行われているコミュニケーションのときに、教師はきちんと子どもたちと言葉を交わしていっているでしょうか。
それができないと、本来、教師が子どもたちのために行っている全ての事が「先生が勝手にやっていること」になってしまうのです。
学級の荒れが起こるときは、どんなときなのでしょうか。
1 トラブルで教師が子どもを納得させられないとき
いじめや暴力等の複雑な問題は複数の教師や管理職であたるのが基本です。
ちょっとした小競り合いやけんかのような場合は、まずは、トラブルがあったときに、子どもの思いをよく聞かねばなりません。一部の子どもの声だけを取り上げて、子どもを叱ると不公平になります。
複数の子どもたちから話を聞くことで、事実を正確に把握することができます。
私は、子どもたちからの話を聞いて、A3の大きな紙に描き込んでいきました。全員から一通り聞き終えたところで「付け足すことは?」と尋ねて、確認して事実の把握していました。
保護者から「なんで、うちの子が叱られたのですか?」というクレームがきたときに説得することができます。
2 教師に笑顔がない
子どもたちと一緒に笑うって、とても大事なことなんですよ。一緒に笑うと、安心感が生まれやすいのです。
荒れる学級にしていく教師には、間違いなく笑顔が足りません。
3 子どもたちのガス抜きができない
教師が子どもたちをぎゅうぎゅうに締め付けて、学級を維持させて、荒れをつくるバターンです。緊張を長い時間続けることには、限界があります。何かの出来事をきっかけに崩壊します。
4 授業が分かりにくい(おもしろくない)
分かる授業は、どの子どもにとっても楽しく、授業が嫌じゃなくなってくるのです。
分からない授業は退屈です。そういう授業をしている教師に対して否定的になるのは当然ですよね。
1日に一教科でも、おもしろいなと感じさせられたら荒れる確率も少しは抑えられるでしょう。
5 子どもを教師の思うようにコントロールしようとする
子どもに恐怖心を与え、プレッシャーをかけて、子どもをコントロールしていくやり方をする教師がいます。
子どもは人格を持った人間です。ペットのように厳しさで調教することはできないのです。
6 子どもとのコミュニケーションが成立しない
全国各地で若手教師の授業を観ていると、子どもたちとコミュニケーションが成立していない状態を見かけます。
コミュニケーションのある授業とは、子どもたちの反応に応じて
「今のは、どこか分かりにくかったかな?」
「なんだか、みんな困ったような顔をしているね」
とか、問い直す授業です。
また、一人の子どもの発言に対して
「みんな、Aくんの言ったことを、どう考えるかな」
とクラス全体に返す授業のことです。
自分勝手なペースで授業を進めている教師がいます。そういうクラスでは、子どもたちは授業が進むにつれて、どんどん学習から離れていきます。子どもたちは教師からも距離をとるようになっていくのです。
7 子ども一人ひとりとのパイプがない
子どもとは、教師と一人ひとりつながっていくパイプが必要です。パイプとは
(1)子どもたちと一緒に遊ぶ
一緒に遊んでいると、子どもたちは素顔を見せてきます。どこか仲間意識が芽生えて、話を聞いてくれることもあるのです。
教師は遊んでいるとき、公正なお山の大将になれます。
(2)趣味を共有できる
子どもと趣味を共有できたら、その子とつながることができます。
(3)日記でつながる
日記は子どもたちと個別につながる有効な手立てです。
学級崩壊状態の五年生の担任が、個々の子どもたちとの日記のやりとりをしていたら、何人かの子どもたちが「わたしは今のままではいやなんです」という声を聞かせてくれました。
それで、その子たちのために最後まで続けることができました。
教育は、結局は一人ひとりとの関係の上に成り立ちます。日記は関係づくりの手立てのひとつです。
この7つです。
((多賀一郎:1955年生まれ、神戸大学附属小学校を経て私立小学校教師。退職後は追手門学院小学校講師、専門は国語教育。在職中に日本私立小学校連盟国語部全国委員長歴任。親塾・教師塾等で保護者・教師教育の手助けをし、全国で講演)
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