子どもを指導し、指示するときのポイントは何でしょうか
子どもに対する強制的な指導や指示は、子どもたちに受け入れられにくくなっている。
それゆえ、強制的な指導をするときには、その前に、まず、子どもたちに意味・理由を、しっかりと説明しなければならない。
子どもたちは、これを了解することで指導を受け入れやすくなる。
また、強制的な指導は、一貫性をもち、規則的に行わなければならない。
「私が怒られたのは、先生の機嫌が悪かったからだ」とか「同じことをしても、私ばかり怒られる」
といった気持ちを子どもがもったとしたら、その時点で教師との関係は崩れてしまう。
教師が本当に自分のことを思って、怒ってくれていると子どもが感じるには、それ以前に教師と子どもとの心の交流や、子どもたちにも伝わるような明確な基準が必要である。
それなくしては、怒るという指導をする意味がなくなってしまうのである。
また、強制的な指導によって、子どもにやらせる以上、子どもが「やってよかった」と思える結果をださなければならない。
つまり、そのような結果を出せる課題を与える必要がある。
強制的にやらせたあとは、子どもが結果を出し、その努力をほめることによって、はじめて子どもは「やらされたけど、やってよかった」と思えるのである。
そこまで面倒を見ていく覚悟なくして、強制的な指導をしてはならないのである。
教師は、日頃、休み時間や放課後に自己開示をしながら雑談をし、ユーモアを交えて話をすることで、話しやすさと、教師の人間性を子どもに表現し、子どもたちと関係をつくっていくとよい。
教師は学級の雰囲気をつくる大きな要素である。明るく元気に子どもたちに声をかけよう。
子どもたち全員の、小さな努力、わずかな変化も見逃さずにほめる。言葉にして伝えることが大切である。教師が感動したことや楽しかったことを、素直に言葉や表情で表現する。
その繰り返しの中で、時に強制的な指導をし、そこで生まれた子どもたちの努力をほめ、子どもとの絆が深まるのである。
子どもの間違った行為に、すぐに叱責せずに、正しい行動をとるための具体的な指示を与え、期待通りの正しい行動をとろうと努力したときに、ほめるという寛容さが大切である。
子どもにはプライドがある。叱るときは個別に呼んで、じっくり話すようにする。
反対に、ほめるときは、全体の前でみんなに伝える。多くの人に認められるのはうれしいものである。
本人のいないところでは、批判せずに、ほめて、ほめ言葉を広めるようにする。
教師の専門職としての技術は、子どもたちを指導する際に、いかにわかりやすく伝えるかという技術でもある。
私が担任をしていた学年の教師Aの言葉はソフトで、しかも信念に満ちた語り口であった。
彼の周りには女子生徒が集まり、さまざまな相談がもちかけられていた。彼の持つ温かさという「人格的魅力」とともに、その信念からくる安心感、つまり教師としての魅力だったのだろう。
私は多くの失敗もし、先輩教師や子ども、保護者からたくさん学んできた。
そんな私が教師にとって、もっとも基本的であり、必要であると実感している技術は「話す技術」と「指示を出す技術」である。
1 話す技術
(1)両足に均等に体重をかけ、すっきりと立つ
(2)子どもたちの顔を見回して話す
子どもたちの顔を後方の右・中・左の三ポイントを見渡しながら話す。
(3)声は適度な音量で
声は小さすぎず、大きすぎず、適度な音量で、メリハリをもつ。
(4)体で表現する
話を強調するときは、手で示すなど、ジェスチャーで伝える。
(5)表情で話す
話を盛り上げるときには笑顔で、注意するときは厳しい表情で。
2 指示する技術
(1)最後の行動まで示す
最終的に、どうするかということまで示す。
(2)一度の指示では一つのことを
いくつもの内容を一度に言わず、一つのことのみを言う。
(3)一つの動きが終わったら確認する
一つの動きが終わったら、全員ができたかを確認する。
(4)全員ができるまで次の指示を出さない
全員の動きが終わるまでは、次の指示を出さずに、待つ。
(5)指示を出したら、評価する
指示をして、子どもたちを動かしたら、自分の気持ちを語って評価する。
(若菜秀彦:1961年生まれ、中学校教師、教育委員会指導主事、千葉県公立中学校長を経て同公立高校校長)
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