子どもたちを「上手に叱ることができる5つの基準」は、すばらしい叱り方と思います
私にとって、子どもたちを「上手に叱れる」ようになるというのは長年の課題です。
私は子どもたちから「授業が分かりやすくて楽しい。やさしくて笑顔が絶えない先生」と、毎年、書いてもらっています。
でも、子どもたちがリラックスしすぎて、うるさくなる。勝手なことを始める子を上手に止められないという悩みも同時にもっていました。
新学期が始まる直前の春休みに私は「たのしい授業・学級開き直前ゼミナール」に参加し、叱るということについて学びました。
山路敏英(東京都中学校)先生が次のような話をされました。
「私は、危ない、迷惑、失礼、ずるい、下品なことは嫌いです。だから叱ります」
「1危ない、2迷惑、3失礼、4ずるい、5下品の順で叱りますと、子どもたちに宣言します」
「こういう優先順位を決めておかないと、子どもたちを叱っても、うまく逃げられることがあるんだよね」
「例えば、授業中におしゃべりをしているAがいるとする」
「『A、おしゃべりをやめなさい』と注意すると、Aは『どうしてオレばかり注意するんですか。Bは寝ているのに注意しないんですか』」
「こういうときに、自分の中に基準や優先順位をしっかり持っていないとグラついてしまう」
「そして、そうだな、Bも注意しなくてはとなって、Aにごまかされたりする」
「だけど、この優先順位を持っていると『Bの寝ているのは3の失礼、Aのやっていることは2の迷惑。Aの方が叱られる順位は上だ』とビシッと言える」
私は、この話を聞いて「なるほど」と思いました。私も叱ったはずの生徒にごまかされてしまうという、くやしい思いをよくしたからです。
さっそく新学期からマネをしてみようと決めました。
4月、中学1年生の担任になった私は、さっそく新学期2日目に、5つの基準について紙に書いたのを生徒に見せながら
「私は、こういうことが嫌いです。こういうことをすると叱ります」
と話をしました。生徒は「へぇ」という顔で聞いていました。5つの基準を書いた紙を黒板に貼っておきました。
何日かたつと、子どもたちの緊張もとけて、叱らなければならない場面が出てくる。
そしたら、なんと、私が子どもたちに注意したいことのほぼすべてが、この5つの基準に見事にあてはまりました。
例えば、私が大事なことを伝えているとき、子どもたちの「おしゃべり」に、すかさず私は話を止める。
「今のは何番?」と子どもたちに問いかける。
するとすぐに「2番の迷惑」「3番の先生に失礼になる」と子どもたちが応える。
私は「そうだよねー。エライ」なんていう感じ。
何かで叱られて「オレだけじゃない」って言い訳をする子どもがいたりすれば、他の子どもたちが、すかさず「4番のずるいだ!」と声をそろえてくれる。
うわぁ、こりゃ助かる。子どもたちが自分たちで、ちゃんと自分たちの行動を律してくれる。お互いにしつけあってくれる。
しかも、イヤな感じがちっともしない。叱ることにあんまり自信がない私なのに、今年は上手に秩序を作っていけている。
私も、基準があるから自信をもってビシッとでっかい声でみんなの前でも叱れる。だから、クラスの雰囲気も「いいことはいい」「ダメなものはダメ」っていう、いい感じに自然になっている。
山路先生の5つの叱る基準のおかげで、間髪をいれずに、核心をついて的確に短く、ビシッと叱ることができるというのは、子どもたちにとっても理想的な叱られ方に近いのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
(滝本 恵:埼玉県公立中学校教師)
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