教師は教材を「北風」から「太陽」に変える教材研究を
熱心で、まじめな教師ほど、子どもたちの「勉強したくない」というマントを、何とかぬがせようとして、一生懸命「北風」を送っている。
「北風」とは、おもしろくない授業であり、教科書通りの授業であり、教え・わからせ・理解させる授業であり、子どもが「受け身」の授業である。
この北風では、マントをぬがないことは、イソップ童話が証明している。
そこで、教師は「北風」を何とか「太陽」にかえて、太陽光線を子どもに注がなければならない。
「太陽」とは、おもしろい教材のことである。
教師の教材研究は「北風」を「太陽」に変えることである。
この教材の条件として、私は三つのことを考えている。
(1)おもしろい
どんな立派な内容であっても、おもしろくなければ、子どもたちは見向きもしない。
子どもたちの、おもしろいかどうかを見分ける能力はみごとというほかはない。
(2)基礎的・基本的内容がある
やはり、基礎的・基本的内容が、ちょっぴり入っているということであ。おもしろさだけではマンガになってしまう。
(3)学習方法がよくわかる
よい教材は、提示しただけで、どう調べたらよいかわかる。
つまり、子どもに、目あて、見通しの立つ教材がよいということである。
おもしろい教材(太陽)を子どもに提示しただけで、食いつくものがある。
例えば「さとうきび」である。
「さとうきび」は、提示しただけで、
「これは一体何だろう?」
「パンダのエサではないか?」
「竹ではないか?」
「すすきの大きいのだろう」
といった反応を示す。
まさに「太陽」といえる。
しかし、提示しただけでは食いつかない教材が圧倒的に多い。それで太陽光線、つまり、教材の威力を強めるために「凸レンズ」が必要になる。
この「凸レンズ」を、私は「教育技術」とよんでいる。
この教育技術には
(1)発問・指示
(2)資料の活用
(3)板書
(4)話術・表情・ゼスチャーなど
(5)人間性
などを挙げることができる。
これらの「教育技術」を活用することによって「太陽」である教材を生かすことができる。教育技術がなければ、いい教材も生きない。
材料である教材を、いかに開発するか、いかにおもしろくするか、いかに新鮮なものをもってくるかが大事である。しかし、いい教材も、腕がなくては真に生かすことができない。
「太陽」のような教材と、よい教育技術を身につけたい。
(有田和正:1935-2014年、福岡教育大学附属小倉小学校、筑波大学付属小学校,愛知教育大学教授、東北福祉大学教授、同特任教授を歴任した。教材づくりを中心とした授業づくりを研究し、数百の教材を開発、授業の名人といわれた)
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