中学3年の三者面談で子どもと親の希望が異なるとき、担任がうまくまとめるコツとは
中学3年の担任でいつも悩まされるのは進路指導のことです。
受験する高校を決める三者面談で、保護者と子どもの希望が一致しないこともよくあります。
最終的には、子どもの意思を尊重するという保護者がほとんどですが、なかには親子の意見が一致せず、子どもが「いやだ」と、投げやりになることもあります。
親子の意見が一致せず、不安でいっぱいになった子どもは、学習意欲を失い成績が下がり、いらいらして学級を乱す行動をとるようになります。
受験手続はタイムリミットがあります。いつまでも親子でごたごたさせたままにしておくわけにもいきません。
同僚教師からは「必要な情報を渡したら、後は家庭の問題。巻き込まれるな」と言われたりします。
混乱する子どもと、その後ろにいる保護者に担任はどうかかわっていったらよいのでしょうか。
一方的に押しつける親を問題として感じ、親を変化させたいなら、親の態度を問題にしないことが大切です。
子どもの味方になりたいときほど、三者面談では意識的に保護者を支えるように動くほうがよいのです。
このことは、保護者の意見を受け入れることを意味しているのではありません。
保護者の意見の裏側には、子どもに対する願いがあるはずです。その、わが子への願いを聞き出すことに意識を集中します。
おそらく、親子で十分な話し合いがなされず、面談に臨んでいるはずです。
保護者にその進路先を希望する理由を丁寧に尋ねることは、子どもの前で、保護者の考えを丁寧に説明させるという意義があります。
わが子の幸せを願うという親心がその背景にあるという気持ちで担任は拝聴します。
そのうえで、
「お子さんは、どのような希望をもっていらっしゃると思いますか?」
と保護者に尋ねます。そして、
「なぜ、お子さんは別の高校を希望するのですか?」
と保護者に尋ねます。
ここで、保護者がわが子の気持ちを正確に把握しているなら、子どもはふてくさるようなことは起きないでしょう。
多くの場合、保護者はわが子の気持ちとは見当違いのことを言います。
そこで「君自身はどうなの?」と、子どもに水を向けます。
子どもが、ふてくされてしまったら
「不満なようですが、お子さんは今どのように考えていると思いますか?」
と保護者にたずねます。
この答えが見当違いのようでしたら、子どもの表情を読みとりながら、教師がその気持ちを代弁してみます。
そして「先生の想像は当たっているかな?」と確認します。そして、
「きみが、そういう気持ちだとわかって、親御さんはどう思っていると思う?」
と子どもにたずねます。
「相手がどのように考えているのか」を想像させ、交互に語ってもらうのです。さらに
「ここにこられていないお父さんと同じ意見だと思いますか?」
とたずねます。そして、
「家族それぞれが、本人の進路についてどのように考えていると思うのか」をめぐっても、親子双方から順番に話をしてもらいます。
家族に巻き込まれず、家族のそれぞれと同じ距離をとりながら、家族関係にかかわるのです。
これを少しの時間続けると、不思議なことに関係そのものが望ましい方向に変化していくはずです。
だれの味方にもならずに、丁寧に会話が進むような公平な司会役をすると、親子関係全体がよいほうに自然に向かっていくのです。これが三者面談のコツなのです。
(小林正幸:1957年群馬県生まれ、東京都港区教育センター教育相談員、東京都立教育研究所相談部研究主事等を経て東京学芸大学教授。不登校を始め学校不適応、ソーシャルスキル教育、教育相談、教育技術を研究)
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