保護者からの苦情対応で、トラブルを引き起こす教師側の原因とは
保護者からの苦情対応において、トラブルを未然に防ぐためには、まず教師の姿勢を変えなければならない。姿勢を変えることによって、多くの問題の解決が図れる。
では、トラブルを引き起こす教師側の原因はどこにあるのでしょうか。
それは、教師が「私は教師だ」と思っていることである。一般企業と大きな差が生じる。
教師の上から目線である。教師は「教える者」なのであるが、それは子どもに対してであり、保護者に対しては必ずしも教える者ではない。この違いは大きい。
ただ、思っているだけなら問題はないのだが、それがプライドとなると時として自己防衛になることがある。
保護者から強い口調や強硬な態度に出られると、日頃、子どもを相手にしている癖で、無意識のうちに保護者相手に、教えたり叱ったりする立場になり、それが言葉と態度に出てしまうのだ。
その結果、保護者は教師にバカにされたように感じ、さらに怒ってしまうことも多い。
教師というプライドさえなければ、保護者と対等の立場で聴くことができるだろう。
教師には、教師特有の弱点がある。保護者の苦情を「聞くことすら嫌だ」と思う教師はたくさんいる。
とくに教師自身が一番気づいていないことは、相手の言い分を受け入れてみようとする姿勢が最初からないことだ。
こうした教師の初期対応は、相手に対する思いやりやりがなく、自ら問題をこじらせてしまう。
教師は「教師は正しく、保護者は間違っている」と断定することが多いのである。
これが原因で、学校と保護者の問題がうまく解決できないことに教師は気づいていない。それでは自分を窮地に追い込むだけだ。
保護者の言っていることが嫌だと、保護者を一方的に押し返そうとしてしまう。それも態度や言葉による圧力で対抗する。その結果、保護者の逆鱗に触れてしまう。
「うちの子が言っていることが絶対正しい」と、わが子の言うことを信じたい一心で、子どもの言うことなら何でも真に受けて行動を起こす保護者がいる。
このように保護者にも落ち度があるが、子どもを思う気持ちが強いあまり、ということが背景にあることをふまえて対応せねばならない。それには一歩引いて話を聞くことから始めるべきだ。
教師は、苦情を言ってくる保護者の存在とその文言や表情に対して動揺しているように感じられてならない。
文言や表情にとらわれてはいけない。ここはひとつ冷静になるところである。
次にしなければならないのは、苦情内容を聴いたときの分析である。
言わずにいられない保護者の気持ちの「落としどころ」が見つかるかどうかがポイントである。
保護者の苦情を最初に受ける担任は対応の仕方をつぎのように心得ておくべきである。
(1)保護者の要求が無理だとわかっていても、黙って聴くこと。
(2)担任は自分で判断せず「ご提案は、お預かりして、校長や教頭に相談してみます」とその場で伝える。
(3)実現が困難だとわかっている場合は、つぎのように軽い予防線をはる。例えば
「たいへん貴重なご提案をいただき、ありがとうございます」
「さっそく会議にはかれるよう提案してみます。少しお時間をください」
「しかし、その会議で検討しても実現できるかどうか、という問題も出ます」
「なぜなら、学校では年度当初に、子どもの安全を最優先に計画的に決定がなされていますから、変更はとてもむずかしいと思います。その点だけはご承知ください」
「でも貴重なご意見です。ありがとうございます」
というふうに。
(関根眞一:1950年埼玉県生まれ、苦情・クレーム対応アドバイザー。百貨店に34年間在職し、お客様相談室長を経て、メデュケーション(株)代表取締役。新学校保護者関係研究会委員)
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