一人ひとりの保護者とつながるには、どうすればよいか
私は、保護者と話すことが苦手だ。20年以上教師としての経験を積んできても苦手だ。
その理由は「保護者の思いは一人ひとり違うという意識があること」である。
これまで経験してきた保護者対応で、経験を重ねれば重ねるほど、保護者一人ひとりの思いが違うということが痛いほど、よく分かり、よく見えてくるようになった。
保護者懇談会で保護者を前に話すとき、保護者一人ひとり異なる思いや価値観がある。力のない私には、これらを受け止め、話すことができているのか、いつも不安でいっぱいだった。
クラス全体の様子は、保護者にとって知りたい情報のひとつである。しかし、もっと知りたいのは、クラスの中でのわが子の様子ではないだろうか。
そう考えると、懇談会でクラスの様子を話している時に、どれだけ一人ひとりの保護者に私の話が届いているのか、不安になるのだ。
一人ひとりの保護者と話せる、家庭訪問や個人懇談以外にも、こまめに家庭に電話をして、子どもの様子を伝える。
学校の廊下などで保護者を見つけると、そばに寄って、いろいろな話をしながらコミュニケーションをとるようずっと努力してきた。
しかし、私のキャラクターと能力では、なかなか思うようにできなかった。
そこで、一人ひとりの保護者とつながるチャンネルを持つことができる、次のような実践を行うようにした。
1 ハガキ作戦(野中信行氏実践)
一人ひとりの子どもの様子をハガキで伝えるものである。直接、話をすることが苦手でも、これならできると思えたのである。
子ども宛てに送られるものだが、私は保護者もハガキを見ることを強く意識して取り組んだ。
私は学期に1枚、年間で3枚のハガキが一人ひとりに届くことを目安にしていた。
1週間に2枚書けば、クラス全員分を学期中に送れるという見通しで書き始めた。
ハガキの内容は、例えば
「Aさんへ、今日、ポツンと残っていた牛乳バックを片付けていたよね。自分のじゃないのに、やってくれてうれしかったよ。ありがとう」
「気づいても、なかなか行動に移すことが難しい人が多いのに、Aさんはさすがだと思ったよ。いろんなことに気づけて、行動に移しているね」
その子のよさは、クラスの様子の中でどうなのかを伝える。
「〇〇を頑張っていたね」ではなく「△△という中で、〇〇を頑張っていたね」と伝えることを意識した。
2 一筆箋(ちょんせいこ氏実践)
一筆箋に子どもたちのよさを文章にし、保護者に伝えるものだ。私は、一日1枚と決め、本人に渡した。
学期に一人1~2枚という見通しを持って取り組んだ。
例えば
「Bさんへ、今日、Bくんが友だちに分からないことを教えている時、膝をついて、同じ視線になって教えてあげていました」
「Bくんのやさしさがあらわれている。とてもステキな姿だと思い伝えました」
継続できるように、特別なことでなくても書くこと。
「ハガキ作戦」「一筆箋」も、双方向のコミュニケーションではない。しかし、文字情報ならではのよさもあるし、間違いなく一人ひとりとつながるチャンネルになる。
一人ひとりの保護者とどうつながり、どう信頼を築いていくかという課題を考える時、大切なのは、これなら自分でもできるという発想やツールに出会い、保護者とかかわっていくことである。
(大野睦仁:1966年生まれ、北海道公立小学校教師。「教師力 BRUSH-UPセミナー」事務局長)
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