保護者が「学級崩壊では」と校長に訴え、保護者会で責めたてられ担任が体調くずした、どうすればよいか
年度当初から騒がしい状態が収まらず、保護者が「学級崩壊では?」と校長に訴えました。
解決策を話し合う保護者会が開かれ、保護者が担任を一方的に責め立てる場になってしまいました。
それ以来、担任は「学校が怖い」と感じるようになり、体調を崩して休みがちとなりました。
長年、精神科の医師として教職員を診療してきて、以前と大きく変わったと感じることは、教師と保護者の関係です。
保護者が学校に対して意見を述べる力を持ってきたと同時に、一方的に権利を主張する保護者も増えていることを痛感します。
担任が学級崩壊など、子どもとの関係で悩み、体調を崩して休職するケースは少なくありませんが、最終的に決定的な影響を与えるのは保護者です。
担任が保護者から責め立てられると、管理職が休ませる方向を選ばざるを得ないことが多いわけです。
私どもの調査でも、保護者対応のストレスが加わると、休職率が高まることがわかっています。
復職も保護者の動向が重要です。保護者が応援している場合と、バッシングされている場合とでは、復職できる時期がまったく違ってきます。
休職して病状が回復しても、学校が怖いと思うほど心が傷ついていては、復職する自信が持てません。
保護者に要望したいのは「子どもの前で担任の悪口を言わない」ということです。
批判力がまだ育っていない子どもたちがまねをすれば、担任に必要以上の心理的負担がかかってしまいます。子どもの成長にも良い影響は与えないでしょう。
また、管理職が担任の意見を聞かずに一方的に保護者に頭をさげることも少なくありません。
管理職は担任と保護者の双方の言い分を聞いて、保護者の「わがまま」であれば、毅然と対処すべきです。
重要なことは、担任の挫折体験を癒せるのは同僚教職員だということです。
同じような立場で共感し合えるのは、同じ教職員です。
悩みを打ち明け合うことで、挫折体験が癒され、結果的には症状も和らぐことが期待できます。
専門家である教職員からの意見であれば、納得できるでしょうし、先輩や同僚から評価されることは自信につながります。
もし、学校で相談することができないのであれば、病院などでカウンセリングを受けることをお勧めします。
学校でのサポートと病院を受診して悪循環を断ち切るという、二本立ての取り組みが有効でしょう。
教師自身のメンタルヘルスがプラスに作用するには、
(1)子どもたちとメリハリをつけて接する
杓子定規に、ただ厳しいだけ、正論を通す、優しいだけではだめではないでしょうか。
子どもたちとメリハリをつけて接することができる教師は、生徒指導がうまいと思います。
子どもの気持ちをフィードバックしながら、その心情を理解するコミュニケーションをはかる。
「叱るときは叱る。ほめるときはほめる」といったことをうまく使い分けできる教師であってほしい。
(2)子どもの話を聴くだけでもだめです。子どもを理解するには、同じ目線に立ちながらも、あくまで友だち風になることなく、指導するときは毅然とした態度をとる柔軟さが必要ではないかと思います。
こうした子どもへの接し方が、結果的には教師自身のメンタルヘルスにもプラスに作用するのではないでしょうか。
(中島一憲:1956-2007年、1990年より東京都教職員互助会三楽病院勤務し部長、東京医科歯科大学教授を歴任した。精神科医師)
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