子どもを見ていて、やばいゾって場面があったとき、修羅場の経験が役立つ
ある地方都市の小学校のベテラン教師。子どもの頃は相当なワルだったとは本人の弁。
港町で育ったから、荒っぽい港湾労働者や海上生活者がいっぱいいて、カツアゲや刃物事件は日常茶飯事。
そうした修羅場を生きてきた経験が教師の仕事に大いに役立っているという。
学校での事件や、不祥事の対応に「そうした教師の経験・資質の差がでるんです」と具体的な事例をまじえて話してくれた。
学校のなかで、なにか事件とか事故が起こったときに、教師が最初になにを考えるかというと、いかにして学校のなかでうまく決着をつけられるかを考える。
表向きの理由は「子どもたちを傷つけたくない」「子どもたちに配慮して」ということなんですけどね。でも本音は「内々で済ませたい」と。
学校でできることは何かというと、再発を防ぐ努力をするしかないわけ。
学校の不祥事というのは、いじめなど内部で処理できなかった問題を指すんです。
外部に漏れて問題になるのは、一つには内部告発があるから。対応に親が満足できなくて、教育委員会やマスコミ、警察に通報するとか。
どんな小さな問題でも教育委員会から調査が入る、そうなったときは大変な騒ぎになります。
なにか事件や事故があった時、それをどう対処するかは、教師それぞれが持っている経験や資質に左右される。
いまは教師自身が比較的いい子ちゃんで育ってきているから、いざ何かあっても自分の判断で対応できないんですね。
例えば、殴り合いのケンカで脳震盪を起こして倒れている子どもを、どうしたらいいかなんて経験している教師は、なかなかいないわけです。
僕のように経験があって、落ち着いて対応できれば不祥事にまでならないで済むことが多いんですけど。
親が学校に怒鳴り込んできた時、教師の対応がだいたい三種類くらいに分かれる。
いたたまれなくてその場からスッといなくなる教師。ただオロオロしている教師。とにかく売り言葉に買い言葉ですぐケンカしてしまう教師。
僕なら、そこで「どうしました」と、まずお茶でも出して、ワンクッション置いて、とりあえず落ち着いて話を聞こうよってことが、どうしてもできないんだよね。そういう初歩的な対応が。
僕にも、ここはちょっと緊張して頑張らないと、やばいゾって場面が一週間に一度はありますよ。
子どもを見ていて、こいつ、ちょっとキレそうだからしっかり見ておかなきゃとか。あの子はちょっと元気がないから家まで送ろうかとか。あの親に一本電話しておこうとか。
そういうのは、本当に勘だけど、それが結構、当たっちゃうから嫌だよね。
例えば、子どもが頭を打ったら、すぐに病院に連れていく。そのときに痛いとか意識あるとか、担任と養護教諭がいろいろ様子を見ますよね。
そういった経過も含めて、親にきちんと言うのと言わないのでは、もう全然違うんですよ。
それをせずに、子どもが家へ帰って夜に、もどしたなんてことになったら大変ですよ。ところがその一言、一本の電話ができない教師がいる。
それができないのは、経験のない若い教師ばかりといえば、そうじゃない。年配の教師でも「うるさい親だから」ってやらない教師がいるんだよね。
リスクに対して、どう対応するかってことは大事。
あんまり、こういう言い方は良くないかもしれないけど、やっぱり教師って、修羅場を経験していない人が多いんだよね。
(地方都市の小学校教師)
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