教師の仕事からくるストレスの原因と、教師が燃え尽きないようにするには、どうすればよいか
多くの教師がストレスにさらされ、メンタルヘルスが深刻の度合いを強めている。中でも、もっとも多いのは抑うつ状態に陥る、燃え尽き症候群、バーンアウトである。
燃え尽き症候群は対人援助職業に特有のストレスを指し、単なる疲労とは異なり、長期間にわたり人を援助する過程で、解決困難な課題に常にさらされた結果、極度の心身の疲労と情緒の枯渇をきたし、自己卑下、仕事嫌悪を伴う状態である。
担任は常に個と集団とのバランスを取りながら、子どもの変化や保護者の要求を敏感にキャッチすることが求められる。
また、担任と子ども、保護者の関係は少なくとも1年間は継続される。カウンセラーと違って、お互いに相手を変えることができないため、人間関係がこじれると身動きがとれなくなってしまうこともある。
2012年に、現職の教師72人にストレス要因を尋ねたところ、
(1)手に負えない子ども振り回される (35人)
(2)保護者との人間関係 (17人)
(3)職員間の共通理解や協力が得られずに孤立 (17人)
(4)同僚とのトラブル (14人)
(5)管理職とのあつれき (11人)
のような結果がえられた。
教師の仕事は、
(1)その行為の責任や評価が子どもや保護者から絶えず直接的に返ってくる。
(2)教える相手が変われば、同じ態度や技術で対応しても同じ成果が得られるとは限らない。
(3)ここまでやれば完成というゴールが見えないために、仕事を家まで持ち帰り、境界を越えて学校外の日常生活にまで入り込みやすい。
(4)気になる子どものことが頭から離れず。また、突然、保護者から相談や苦情の電話がかかってきたりして、素の自分に返ってほっとする時間がもてなくなってしまうことも少なくない。
教師は、子ども・保護者・教師間の人間関係に取り囲まれている。特に、子どもや保護者との人間関係が悪化した場合は、大きなストレスになる。
教師がパソコンに向かう職員室は、心の居場所が少なくなり、教師どうしが本音で語り合い、愚痴をこぼし合う機会が失われつつある。
教師相互が語り合い、支え合う雰囲気を意図的につくり出すことが必要となっている。
がんばりすぎて限界に至る前に、素直に「しんどい」と言える温かい職員室の人間関係を築きたいものである。
うまくいかないときに弱音を吐いたり相談することは恥ずかしいことではない。同僚性を高め、協働で仕事に向かう基盤づくりが必要になっている。
困った問題があるときに相談できる人が職場内にいる。あるいは、教師間の人間関係が良好で、協力的に解決を図ろうとする雰囲気と体制が確立されていれば、困難な状況に取り組んでいくことができる。
(新井 肇:1951年生まれ、埼玉県公立高校教師を経て、兵庫教育大学教授。カウンセリング心理学を基盤とした生徒指導実践の理論化、教師のストレスとメンタルサポート等を研究)
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