保護者からのクレームに若い教師はショックを受ける、クレームが起きる前提と真意を知って対応するとよい
保護者からの苦情やクレームに悩み、対応がこじれて失敗する教師の多くは、問題を一人で抱かえ、悩み、職場で孤立する若い教師が多いのである。
若い教師にとって、クレームの始まりは、たいがい「子どもとの関係づくり」のつまずきからスタートする。
保護者からの初めてのクレームは、若い教師にとっては大変なショックである。厳しいクレームに映る。
保護者からのクレームは「先生に力がないからですよ」と教師の誇りを打ちくだき「私は無力だ」と自責の念や自己否定の感情に追い込んでいく。
だからこそ、若い教師の周りには仲間の教師や先輩教師がいて
「あなたは、がんばっているよ」
「教師として自信をもてよ」
などと、教師仲間が支えるというフォローが必要なのである。
若い教師は、職場の仲間とつながって、問題解決の力量を養って、たくましい教師に成長してもらいたいと願わざるを得ない。
それでは、実際にどのような問題で苦情やクレームを受けるのか。
授業では「先生の授業がわからない」「先生は特定の子ばかり当てたり、ひいきする」「授業は一部の子だけが発言して、先生一人がしゃべっている」「授業の進度が他の学級より遅れている」「わからない子は置いてきぼりだと子どもが言っている」「一部の生徒が騒がしいが、注意しない。頼りなく担任として大丈夫だろうか」「授業は生徒が騒がしく、学級崩壊の状態だ」
生徒指導では「いじめがあっても、いじめた子をちゃんと注意しない」「子どもがケガをしても親への連絡が遅い」「骨折しているのに、ちゃんと病院に連れて行ってくれない」「行事の連絡が遅い」「顧問の先生が部活動に毎日来ない」「部活で実力があるのにうちの子がどうしてキャプテンに指名されないのか」等々。
教師はクレームが起こる前提と真意を知っておくことが必要だ。
親は自分の子どもはかわいい。したがって、わが子の言動を「うのみ」にして、学校の対応に不満や怒りを爆発させ、突然クレーマーになることは日常茶飯事である。
教師の指導や対応が悪いと感じたとき、ある瞬間からクレーマーになるのである。
教師が心得ておかなければならないのは、クレームの裏にある真意をつかむこと。
「一度、機会があれば学校に文句を言ってやろう」
「これまでたまっていたストレスを、学校へ攻撃して表してやろう」
と考えていたりする保護者であるか。
あるいは、以前にもクレームを言って学校を謝らせた成功体験をもつ保護者であったりするか、である。
クレームの裏にある真意をつかまねば、保護者と学校の間の溝は埋まらないし、問題は解決しないのである。
それだけに「お母さん、それはですね・・・・・」と、保護者のクレームの途中で口をはさんで、上から目線で、話の腰を折ってしまったり、クレームの内容をじっくりと経過を追って聞いたりすることがなければ、ため込んでいたクレームの原因や背景はつかめない。
学校であった指導に満足していない子どもが親に言い、親がそれを「うのみ」にして学校にやってくるのである。それだけに問題の解決を複雑にする。
クレームの問題解決を子どもの視点で行うのか、大人同士の問題として扱うのかを間違えると問題を複雑化させてしまうことになる。
大人同士の目線で話を進めると「謝れ」「謝らない」という言葉尻をつかんだ口ゲンカになり、メンツが先行する。
そうではなく、子どもの目線でクレーム問題の解決をはかるとよい。
「子どもがどう思っているのか」「子どもはどうしてほしいと言っているのか」「どうすれば、一番子どものためになるのか」という教育的視点を最優先に話を進めていくことである。
保護者と学校とのコミュニケーションの実体調査の結果から、保護者が学校とコミュニケーションがとれていないと思っている割合は、教師より4倍も多い。
保護者は教師よりもコミュニケーションが取れていないと実感しているのである。
したがって、教師から保護者への日常的な「お知らせ」や「おたより」、すばやい「連絡」「報告」「家庭訪問」などを通したコミュニケーションや話し合いで、子どもについての情報を共有し、信頼関係をつくることが非常に重要である。
特に、常に学校へ不満やクレーマを言うタイプの保護者は、日頃からの連絡を早くし、連絡も密にする必要がある。
(古川 治:1948年生まれ、大阪府公立小学校教師・指導主事・校長、東大阪大学教授を経て、甲南大学特任教授)
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