教師が連携して学級崩壊を解決していくためには、どのようにすればよいか
教職員がなんでも話し合える人間関係が大事であるといわれます。しかし、これがなかなかの問題なのです。
小学校の場合、担任の裁量が大きく、同僚教師にも見えにくいところがあります。お互いの実践を批評し合うのはタブーの雰囲気が生まれてしまうのです。
したがって、お互いに自分の学級経営の悩みが語れるような人間関係を、学校内に形成することはとても必要です。
ですが、学級崩壊の問題は、教師間の良好な人間関係だけでは対処はむずかしいと思います。
つまり、一つの学級の崩壊の問題は、学校経営の問題として位置づけて、管理職を中心に連携のあり方を計画しておくことが必要ではないでしょうか。
それは、
1 全教員で介入しようと判断した時、該当する担任や援助する教師たちの授業時間数や校務分掌の仕事はどうするのか。
2 学校行事や集会の取り組み方はどうするのか。
3 学級崩壊した学級、もしくはその学年の時間割の見直し、PTAの対応をどうするのか。
など広範囲に及ぶと思います。
特に学級が高学年になるほど、学校全体に対する影響が大きくなります。組織だってやらないと、一部の教師に過重な負担がかかり、いい結果に結びつきません。
学校運営の問題と位置づけて対応するためには、次の3つが必要です。
1 学級崩壊はどの学級にも起こる可能性があるという共通認識をもつ。
2 学級経営に関する校内研修を行う。例えば
(1)集団理論
(2)リーダーシップ
(3)学級集団の状態を理解するための調査法
(4)具体的な指示や注意の仕方についての演習
(5)言葉がけの仕方についての演習
などを、計画的に実施し、教師間の共通認識と技術を高めておく。
3 学級崩壊の問題は不登校の子どもへの対応と同じように、
(1)原因や責任の追及だけにしない。
(2)問題解決志向で学校運営に位置づける。
(3)援助チームのリーダーは管理職が当たる。
(4)担任や援助する教師たちの具体的な役割や取り組む範囲を明確にする。
大事なことは、現在よりも少しでもよい方向に向かうように、一歩一歩取り組んでいくことです。
連携がうまくいけば、担任が精神的に支えられ、計画的に対応する意欲が維持され、対策を講じることも可能になっていくのです。
学級崩壊の対応について、事前に職員間の連携について取り決めをしておく必要があります。学級崩壊の予防にもなり対応が効果的になります。
連携の目的は問題解決です。学級崩壊の対応には少なくとも2か月はかかると考えて取り組みます。甘い見通しの連携では、援助する教師が疲れてしまいます。
1 学級崩壊の初期の連携
学級崩壊の兆しは、ふれあいのある人間関係か学級のルールのどちらかが崩れてくることです。
この時期に学年会などで、各学級の状況を担任同士が率直に語り合う必要があります。
学級集団の状態が学級崩壊に向かっていると判断された場合は、すみやかに学年の連携を計画し実行します。
連携の骨子は、合同授業などの学年活動です。例えば、合同で社会科の資料を作ったり、合同で体育やレクリエーションをするのもいいでしょう。
大事なことは、学級崩壊している担任が全体の指揮をとり、他の学級の子どもたちがその指示に従っていることを、学級崩壊している学級の子どもたちに見せることです。
同時に、学年の他の教師が学級崩壊している担任の指示に従っているのを学級崩壊しているクラスの子どもたちが見ることになります。
学年の他の教師がその担任と親密に連携し、同じ考えややり方でやっていることを見せ、担任の信頼感を回復させるわけです。
2 学級崩壊の中期の連携
学級はルールが崩れ、人間関係もギスギスしたものになっていますから、子どもたちは物事を悪いほうへ悪いほうへととらえます。いろいろな問題がでてきます。
子ども同士のまきこみあいを、複数の教師が教室に入って、一つひとつ対応しながら断ち切っていくのです。したがって、学年の同僚教師や専科教師にTTとして入ってもらうことになります。
このとき、教師は努めて厳しくする必要はありません。子どもの感情にまきこまれないように、ていねいな言葉づかいで距離を少し多めに取りながら、一つひとつ冷静に対処していくのです。感情的になったら教師の負けです。
この時期の授業は基本的に、他の子どもと関わらない、例えばドリルやプリントを中心としたような授業展開をしますから、教師チームが子ども一人ひとりに対して丁寧に個別に対応していきます。
さらに、学年で集まる機会を増やします。学年で集まることによって、自分勝手なルールは通用しないことを意識させるのです。集団生活には一定のルールやマナーがあり、特例がないということを、一人ひとりにわからせるのです。
このような対策をとる場合、大事なことは、学級が崩壊したからそのような対策を取ったんだと、子どもたちにおもわれてしまうと、逆効果になることです。
担任への不信が固定してしまうからです。したがって、学年当初から、学級間の交流や教師同士のTTの授業展開などをとっていくことが必要です。
3 学級崩壊の末期の連携
この時期は、まさに全教員の連携が必要となります。教室に複数の教師が入り、それこそマンツーマンに近い形で指導したり、活動を援助するのです。
例えば、立ち歩いている子どもに対して、ある教師が注意をしたとき、その子が「みんなもそうだろう」と逆にくってかかる場合があります。
そのようなときには「みんなとは誰と誰かな」と問い、名前が出たらそれぞれの子どもに教師がついて指導するという具合です。
「みんな」という子どもたちが作り出した学級集団像を崩すことが大事なのです。
必ず、行動の主体となっている子どもを確認し、行動の責任を明確にしてあげることが大事です。
学級崩壊末期は、学年の合同授業や活動はしないほうがよいでしょう。合同することで他の学級の子どもたちが傷つくことが多くなり、合同することを嫌がってしまいます。
何よりも問題なのは、他の学級の子どもたちが、その学級の子どもたちを特別視してしまう結果、その学級の子どもたちが新たな非建設的な行動にでてしまう可能性があるからです。
(河村茂雄:1959年生まれ、早稲田大学教育学部教授。15年間公立学校教諭を経験した。学級崩壊,学級経営など教育実践に生かせる研究成果を多数提供している)
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