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学級崩壊に苦しみ退職したが、再び教師に復帰し、仕事が管理職から評価されるようになった

 中学校の教師が学級崩壊に苦しんで退職し、その後、採用試験を受け教師に復帰した。その教師の経験を取材した。
 初めての担任で、生徒との4月の出会いは、準備することなく、行き当たりばったりだった。
 やんちゃな生徒が「〇〇しなくてもいいですか?」と、担任を試す言動(アドバルーン)をくり返し、担任が思いつきの対応し、他の生徒たちも真似るようになった。こうなると崩れるのは早い。
 優れた実践を知らなければ危機意識も持ちようがない。
 できない自分に非があるという反省には至らずに、生徒のせいにしたり、家庭や地域のせいにしてしまう。
 当時の本川先生もそうであった。我流を通しているうちに生徒たちが荒れていった。
 本川先生の問題点は
(1)
挨拶ができていなければ、何度もやり直しをさせた。
(2)
一部の生徒の問題を、全体の問題にして、くどくどと説教をした。
(3)
過去のことを持ち出して「あの時もそうだった」などと責め、生徒の変容を認めなかった。
 どれも「禁じ手」である。生徒の自己肯定感を、むやみやたらに傷つける方法だからである。
 自己肯定感を高めていくために私たち教師の仕事がある。それを傷つけては生徒から忌避されて当然なのだ。
 生徒たちは次第に本川先生を呼び捨てにするようになり「タメ口」をきき、指示に従わなくなっていった。授業ができなくなっていった。
 心底困り、信頼できる教師に相談した。しかし、納得のいく答えは返ってこない。
「原因はこれだから、こうすればよくなる。そのためには、まずこれを学べ」というような具体的な対応策が一つも出てこなかった。
 教師が学ばず、実力を高める努力をせずに、失われた信頼と尊敬を取り戻すことはできない。
 信頼と尊敬のないところでいくら指導をしても、叱責をしても、生徒は聞く耳を持たない。
 だが、若い本川先生はそのことに気づかなかった。
 何をどうしたらうまくいくのかがわからず、指示してくれる教師もない。崩壊状態に悩み苦しみ、自分の力量では教師は務まらないと、ほどなくして退職をした。
 一旦退職した本川先生に臨時採用の話が舞い込んだ。数学の教師を探しているが見つからず困っているという。人助けのつもりで引き受けた。
 いざ赴任してみると、その学校は学級崩壊どころか、学校そのものが崩壊していた。授業中にもかかわらず廊下に生徒たちが寝そべり、罵声が飛び交っていた。
 その学校の教師たちの多くは、すべてを生徒のせいにするばかりで、悩んでなどいなかった。教師自らの非力が生徒に荒れた言動を取らせているのだという認識がなかった。
 ちょうどその頃、本川先生の子どもが中学生になろうとしていた。「こんな教師たちに子どもは預けられない」と憤り、教師に復帰することを決意した。
「今度こそ、学級崩壊はさせない。そのためには勉強するしかない」と意気込んで本屋に行って「女教師ツーウェイ」の本を買った。何度も読み込んだ。そこから、つぎのような変革が始まった。
(1)
全体を優先、個別対応は後にする
 一部の生徒ができていなくとも、全体を動かしてから、個別対応をするようにした。すると、まじめな生徒が安定した。
 また、ヤンチャな生徒も目立たずに指導されるので、素直に直すようになった。
 教師が怒る必要もなくなり、教室に明るい雰囲気が保てるようになった。
(2)
一時に一事の指示を徹底する
「教師がしゃべりすぎてはいけない」と本に書かれていたので、一時に一事を意識して指示を出すようにした。
 すると、全員が一つの指示で反応するのがよくわかるので、指示に従わない生徒への対応もしやすくなった。
 朝の会、帰りの会もプログラムをシンプルにし、司会者にテンポよく進めるように指導した。無駄を省くことも信頼を深める大事な術だと気づいた。
(3)
サークルに入り、模擬授業で指導を受けた
 自分が模擬授業を受ける身になると、教師の立ち居振る舞いの重要性が身にしみてわかった。
 例えば、生徒全体をくまなく見渡す。板書するときは、生徒に背中を向けずに半身になる。教科書を読むときは、どこから読むのか指を置いて見せるなど。
(4)
机間指導に赤鉛筆指導を取り入れる
 赤鉛筆で、勉強の苦手な生徒のノートに途中式を書き込む。時には答えを書き込む。全員のノートに丸をつける。
 そのような支援をすると、授業に参加する生徒が増えていった。
 自分の書いた答えが教師の目を通過していることで自信がつくのか、発表する生徒も増えた。
 生徒全体が思考している最中に、黙って個別対応ができるので、どの子も満足していった。
(5)
ノート指導を徹底する
 行間をあけた、余裕のあるノートを作らせるように、指導を徹底した。
(6)
趣意説明をする
 ノート指導、音読、鉛筆を使う理由など、趣意説明することで納得して行動する生徒が増えた。
(7)
個別評価する
 ノート指導、生徒の解答、一分間スピーチ、日記に対してその場で個別評価すると、生徒はより高い方向へ、さらに伸びようと努力をするようになった。
(8)
生徒の3倍動く
 清掃指導では、生徒の模範となるように、まず自分が動くことを心がけた。
 それも生徒と同じスピードではダメだ。教室・廊下・トイレ掃除をして教室にもどることが常となった。
 模範を示せば、生徒は自然と掃除をするようになる。
(9)
ほめて、ほめて、ほめまくる
 出会いからほめて、ほめて、ほめまくった。授業でも些細なことをほめた。
 よくやっている生徒をほめることで、生徒全体がほめられたいというムードになり、クラスが安定していった。
 静かな生徒も、赤鉛筆でノートにほめ言葉を書き込むとにっこり微笑んだ。
(10)
教師が笑顔で、自分自身が楽しむ
 どんな時も、どんなことも、笑って吹き飛ばすことにした。
 指示に従わないときも、アドバルーンが上がったときも、掃除をしない生徒がいても、笑顔を忘れないことを心がけた。
 全体の場では明るく、短く指導することで効果がでてきた。
 笑顔を保つことで、教師も生徒も楽しく授業ができることを学んだ。
 管理職から「管理職試験を受けてみなさい。あなたのやりたいことを実現する手段です。なってほしいと思う教師に声をかけているのです」と言われたという。仕事が評価されている証である。
(
本川由貴子:中学校数学教師
)

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