子どもたちとうまく対応している教師の共通点 河村茂雄
教師の感覚と、今の時代に育った子どもたちの感覚がずれていても、それはごく自然なことです。子どもたちの心情を察することが難しくなったのもうなずけることです。
大事なことは、かかわろうとする教師のほうで、自分たちの感覚とはずれているという事実をまず受け入れることです。
今の子どもの特徴を前提とするのです。
前提と考えておけば、必要以上に腹を立てることも、少なくなります。そして、そういう状態の子どもに見合った対応を、そのレベルからしていこうとするのです。
私の調査したなかで、子どもたちとうまく対応している教師たちがいます。その先生方に面接した結果、大きな共通点があったのです。それは、
ささいなかかわりの中でも、小さな言葉がけのレベルで「最近の子どもたちの実態を、とりあえずそのまま受け入れ、そのうえで、それに対する対応を具体的に実施していた」ということです。
特に印象に残った中学校の男性教師がいました。一見厳しそうな先生でしたが、通りかかった生徒たちが、気さくに先生に声をかけていました。彼は
「叱れば子どもたちがよくなろうと努力するなら、しつこく叱る」
「でも、今の子どもたちは頭から叱るとへそを曲げて、叱った内容について努力しないばかりか、余計やらなくなる」
「子どもをよくしてあげたいと思ったら、結果として、自分から努力する方向に心を向けてあげないといけない。その方法を工夫しないといけないと思う」
「自分はそのことを、十年前に痛感した」
と言っていた。
ただし、強調しておきたい点が一つあります。
それは、子どもたちとの対応がうまい教師と、そうでない教師とには、能力的に大きな違いはない、という点です。
子どもたちの実態を受け入れ、それに応じて、一つ一つ具体的な対策を取り入れているかどうかの差なのです。
事前にそういう心構えをし、具体的な対策を立てておけば、子どもを叱りたくなる場面が少なくなり、自然とほめることが多くなります。
このようななかで、教師と子どもたちとの人間関係が、だんだんと良好になっていくのでしょう。
(「教師のためのソーシャル・スキル-子どもとの人間関係を深める技術」河村茂雄著 誠信書房 2002年)
(河村茂雄:1959年生まれ、早稲田大学教育学部教授。15年間公立学校教諭を経験した。学級崩壊,学級経営など教育実践に生かせる研究成果を多数提供している)
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