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多くの教師が求めている校長とは、どのような校長か

 人事考課の導入に伴って、職員室の雰囲気が悪くなっている学校が少なくないと聞きます。
 そんな学校では、管理職と教師の関係が、管理的関係、評価的関係になってしまっているのではないでしょうか。
 その雰囲気をつくっている要因の一つは、管理職の伝え下手にあります。
 管理職として評価するのですから、厳しいことを言わざるをえないときもあるでしょう。例えば、
「あなたの自己評価は高すぎます」「あなたの問題は〇〇ですね」
などと、教師の意欲を低下させる伝え方をしていないでしょうか。
 教師になる人の多くはまじめな優等生です。そのため傷つきやすく、叱られるとやる気を失ってしまう人が多いのです。教師はほめられて育つ人が多いのです。
 教師の評価は、本人の自己評価をもとに、コーチングの技法を生かして、その教師の持ち味を生かして肯定的にかかわっていくことが大切です。例えば、
「あなたは自分のよさをよくわかっておられますね。その資質は私たちの学校に、とても必要なものだと思います」
「私は、その資質をもっと○○に生かしていただきたいと思います」
「その具体的な方法として何か考えられることはありますか」
 まず、教師の持ち味となる点に着目して、ほめ「この学校はあなたを必要としている」
というメッセージを伝えます。
 そのうえで、その資質を学校をよくするためにどのように生かしてほしいか、具体的な方法を本人と一緒に考えていくのです。
 その教師の持ち味を生かし、そこを伸ばして、足りない点を補えるのが、できる管理職、伸びていく学校です。
 リーダーシップとは、モチベーションを高めるような指導性です。
「私はこういう学校にしたいんです。そのためにみなさんの力がどうしても必要です。ぜひ力を貸してください」と言える校長先生。
 個々の教師に対して、「あなたに期待していますよ」「あなたが必要なんですよ」と言える校長。
 校長は「私のことを必要としてくれている」という感情を一人ひとりの教師が抱くことができれば、やる気もわいてくるというものです。
 いっぽうで、「何かあったらいつでも相談してくださいね」と気楽に相談にのってくれるカウンセリングマインドも必要です。「弱音を吐ける職員室」をつくっていく最大の役割をはたすのが校長です。
 ぜひ、教師が弱音を吐けるようなあたたかい雰囲気を、校長自らリードしてつくっていただきたいと思います。
 以前、ある小学校の教師が「私にとって校長先生は、学校における親のような存在です」と私に言ったことがあります。
 小学校教師の管理職に対する依存と期待は、並はずれて大きなものがあります。逆にそれが得られなかったときの教師のダメージは非常に大きくなります。
 保護者から攻撃や学級崩壊で教師が傷つき、私のもとに相談に来られた先生方が嘆きます。「校長先生は私を守ってくれませんでした」と。
 ある教師が不登校になりかけた子どもの父親に刃物を突きつけられ「どうしてくれるんだ」とすごまれたそうです。
 それを校長に相談しにいったら、「あなたも大変だね」と受け流されたそうです。
「次に来たら一緒に会いましょう」と言ってもらえなかった・・・・・・。これがショックで大きなダメージを受けられました。
 いっぽう、いろいろな組織の役員をしている大物校長で、一週間に一度くらいしか学校にこない評判の悪い校長がいました。
 ところが、ある父親が学校に乗り込んで来たときのこと。強面で、「娘が学校に行きたくないと言っているぞ。担任を出せ!」とすごんでいます。
 ここで、たまたま、その時に学校にいた校長が登場して、
「ちょっと待ってください。この担任の先生は、私が信頼をおいてお願いしている先生なんです」
「文句があるなら私がお聞きしましょう。さあ先生、あとは私に任せてください」
 このことで、校長の支持率が急上昇したそうです。
 とても荒れていた小学校に校内研修に伺ったときのことです。確かに惨憺たる状況です。
 授業中に物は飛んでくる。子どもが教師の足を引っかけ「くそじじい」「くそばばあ」と言う。黒板には毎日「死ね」の文字。
 しかし、校内研修は和気あいあいとしています。
「あらら、また『死ね』って書かれたの、一週間連続じゃない?」
「足ひっかけられて、あざできちゃうなんて、なんだかK-1みたいね」
 いちばん荒れているクラスの担任は
「職員室がこんなにいい雰囲気だから、なんとか続けることができているんです」
と。
 この学校の校長が実に脱力しきったいい雰囲気を出しています。
「先生方、ほんとうによくやってくれていますよね。私にできることですか・・・。研究指定校をお断りすることくらいでしょうか(笑い)
 管理職がリードして、お互いに弱音を吐いていいんだよ、支え合っていこうという雰囲気をつくること、これはとても重要なことなんです。
 講演会などで担任の先生方にお聞きすると、およそ6割が「うちの校長は頼りない」「リーダーシップが足りない」と感じているようです。
 また、理想の校長像をお聞きすると、最も多い2つが、
「こちらの話もよく聞いてくれて、フットワークもよく、頼りがいのある校長」
「いざというときに守ってくれる、親分肌の校長」
です。
 先生方は、きまったように、
いざというとき守ってくれる、親分肌の校長がいなくなったと嘆いています。
 保護者の攻撃や学級崩壊で心身ともに疲弊しきったとき、「それでもがんばろう」と教師を続けられる教師と、「もうだめだ、限界だ」と辞められる教師。
 この違いが、管理職の対応一つにかかっていることは少なくないのです。
 多くの担任が求めているのは、「いざというとき」に「必ず守ってくれる」と思える「親分肌の校長」です。
(諸富祥彦:1963年生まれ、明治大学教授。専門は臨床心理学、カウンセリング心理学。悩める教師を支える会代表。現場教師の作戦参謀としてアドバイスを教師に与えている)

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