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教師に怒りや敵意を持った保護者と、共に協力して解決するための道筋とは

 怒りや敵意の感情は、自分の願いが満たされないことから起きます。
 まずは、保護者が何を願っているのかを把握することが基本になります。
 怒りや敵意をもつ人は、必ず状況や相手を変えさせたいとの願いがあるはずです。
 その願いは、どのようなものなのか、その願いを読み取ることが大切なのです。
 本当の願いは、強い怒りに覆われます。
 保護者は「先生は、自分の願いに耳を傾け、味方になる人なのか」を探っています。
 教師は、保護者を分かり、理解してくれる存在になるよう心がける必要があります。
 そのために、教師は意識して保護者の心情に寄り添わなければならないでしょう。
 保護者の願いに意識を集中し、理解した部分を言葉にします。
 あわせて、それまでの保護者の苦労をねぎらいます。 
 教師という立場は、子どもの味方になるのは簡単ですが、保護者の味方になるのは難しいのです。「親がもう少し努力してくれればよいのに・・・・」と願うことが多いからです。
 保護者の願いが分からない段階では、不用意な解釈は慎みます。
 保護者の心情に寄り添い、願いをじっくりと感じとるようにします。
 保護者の願いや心情が分かったら
「〇〇してほしいんですね」「〇〇ということで、腹立たしく感じるわけですね」
などと、怒りを要求に置き換え、願いとして理解し、その願いがかなわないことを受け取って、言葉にします。
 大事なのは「今の問題を少しでも上向けるために、自分はどのようにすればよいか、何ができるか」を考えることです。
 保護者の怒りや敵意を保護者のせいにすると、関係の悪化は続きます。
 問題の解決に歩み出すには、見解の相違を見ないようにします。
 保護者の願いを正確に読み取り、見解が一致する点を探し、その一致点の上に立ち、具体的な解決策を探すのです。それ以外に抜け道はないのです。
 そのためには「どうなりたいのか」「どうしたいのか」について、保護者と共有できるレベルにまで願いを広げ、一致点を見出します。
 広い視点に立って、大きな目標で一致点を見出すようにします。
「お子さんに、幸せになってもらいたい」
「お子さんが、辛い思いから解放されるようにお手伝いしたい」
「お子さんが、今よりも快適な生活を送れるようにしたい」
 この程度まで、共有できる目標レベルを広げれば、保護者も異は唱え難いはずです。
 共通の願いに立っていることを確認し、学校側の願いと保護者の願いの一致点を、さらに狭いレベルでも見出すようにします。
 目標を共有することで、仕切り直しをするためには、学校側が、今後の大目標や当面の目標、そのための方針、方法について、事前に具体的に整理しておかねばならないでしょう。
 そのためには、学校側が様々なレベルでの対応策のアイデアを腹案としてもたねばならないのです。
 現実的な目標が共有できる関係になれば、もはや敵対関係ではなくなります。
 目標に向かい、何をしていけばよいのか、解決策や工夫について、額を寄せ合って考えます。
 学校側は話し合いで、保護者に
「学校にしてもらいたいことがありますか」
「してほしくないことがあれば、おっしゃって下さい」
と尋ねます。また、
「何か変えてみたいと思っていらっしゃることはありますか?」
「何かしてみたい工夫があれば、教えていただけますか?」
と尋ねます。
当面、何ならできるのか」を中心に、極めて具体的に考えます。実行できやすいプランを選択します。
 プランを定めて、一定期間実行した後で、評価し必要に応じて変更します。
 成果の出ているプランは続け、出ないものは取りやめを考えることも考えればよいのです。
 大事なことは、一緒に歩む保護者の意欲や意志を支え続けることです。
(
小林正幸:1957年群馬県生まれ、東京都港区教育センター教育相談員、東京都立教育研究所相談部研究主事等を経て東京学芸大学教授。不登校を始め学校不適応、ソーシャルスキル教育、教育相談、教育技術を研究
)

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