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有田正和先生の有名な「郵便ポスト」の授業(小学校2年生)を参観し、これが本当の宿題の出し方だと感銘を受けた

 もう20年以上も前のことになるが、筑波大学付属小学校の公開研究会で有田正和先生の有名な「郵便ポスト」の授業(小学校2年生)を参観した。これが本当の宿題の出し方だと感銘を受けた。
 1日目の授業で有田先生が大きなボール紙を教室に持ち込んで
「これで郵便ポストを作ろうじゃないか」
と子どもたちに呼びかけるところからスタートした。
 途端に、子どもたちは
「そんな紙じゃポストは作れないよ!」
と口々に言い始めた。
 その後は、いかに子どもたちがポストについてあやふやな知識しか持っていないかを自覚させることに有田先生は全力を挙げる。
 ポストの色は「赤」という子に対して「オレンジだ」と言い張る子。
「いや青いポストを見たことがある」と言う子。
「色は決まっていない」と言う子。
 言い合っているうちに
「じゃあ、調べて来ようよ」
と、誰からともなく、そういう声が挙がる。
「じゃあ、形は?」
「差し出し口はいくつ?」
「ポストの回収の時間は決まっている?」「それが書いてある?」
「ポストにポストと書いてある?」
「いや、POSTと書いてある?」
 授業は、ふだん見慣れているはずのポストを「自分たちはよく見ていなかった」と、子どもに自覚させるだけで終わった。
 その間、
 有田先生は何も教えなかった。
 有田先生は何も次の活動の予告をしなかった。
 有田先生は何もまとめをしなかった。
 と、当時の私はただ、茫然とするだけだった。
 帰りの会が終わると、待ちかねたように子どもたちは校外へ飛び出して行った。
 有田先生はひと言も「宿題です。調べてきましょう」とは言わなかったのにである。
 次の日「いったい今日はどのように授業が展開するのだろう」とわくわくする気持ちで、また朝から参観に出かけた。
 子どもたちは、昨日、ランドセルを背負ったまま下校途中に授業で話題になったことについてポストを調べてきたらしい。
 昨日には、あやふやだったことが、子ども同士の情報交換によって、どんどん確認されていく。
 そして、その過程で新たな課題が生まれ、この日も子どもたちは調べる意欲満々で帰っていった。
 1時間目の授業では気がつかなかったが、2時間目の白熱した話し合いの中で、自然と調べる視点について、子どもの理解が深まっていくことが私にもわかった。
 授業の名人と言われる人の力量はすごい。
「宿題です」なんて言わなくても、子どもが自分で課題意識を持って学校から飛び出して行きたくなるような、あんな授業をしてみたいと強く願ったものである。
(
宮津大蔵:石川県金沢市生まれ、桐蔭横浜大学教授)
(
有田和正:19352014年、筑波大学付属小学校,愛知教育大学教授、東北福祉大学教授、同特任教授を歴任した。教材づくりを中心とした授業づくりを研究し、数百の教材を開発、授業の名人といわれた
)

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