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百貨店のお客1,300件以上の苦情に、プロはどのように対応したか

 私は百貨店のお客様相談室の室長になり苦情対応の仕事をしていました。
 百貨店は苦情の宝庫です。苦情の種類にもいろいろあります。
 お客様が大きく変化し、消費者が守られる状態になってきて、お客様が非常に強くなりました。
 苦情というものは、不満、不公平、そして不安というものが形を変えて訴えてくるのです。
 そして今の時代は、弱者へのうっぷん晴らし、いじめという状況にもなります。一部はクレーマーになってくる方もいます。
 苦情の対応能力を養う方法は、場数を踏む、つまり経験を重ねる以外ないのです。
 相手に言い訳(説明)する必要がでてきます。
 ところが、言い訳というのは、技術的にも相当難易度が高いものなのです。
 これを言い訳と、相手にとられた場合には、相手は怒る一方ですので、そこに非常に難しさがあるんです。
 本を読む、人に聞くことは苦情対策の近道になることは確かですけれど、一つひとつ冷や汗をかき、経験すること以外に成長する糧はありません。
 また、苦情の対応にはベストの方法はありません。自分がベストと思って行動しても、相手はそれに突っ込んできます。
 そしたら、また返事をしないといけないんです。もうここまでだとは言い切れないんです。ですから、ベターのくりかえしです。
 クレームの悪い対応としては「早く終わりにさせたい」とか「言いなりになって、気分よく言わせて帰してしまおう」というものです。
 いい対応は、すべてを聴くということです。
 相手が言おうとしていることをすべて聴いてしまう。これが非常に大事なことです。
 なぜなら、すべてを聞いてしまうと、相手は武器がなくなったのと同じです。だから、言わせてしまうということなんです。
 長く聞いていくと、相手の本音が見えます。その本音が見えた時に、そちらに素早くチェンジして、本心の部分を聴いていくことによって、収まることがあると思います。
 相手の話を途中で折るなんてことはとんでもないことで「まだありませんか」「他にもありませんか」と言って聴きつづけます。
 さらに表情を読むことも大事です。
 こちらが合いの手を入れたり、説明した時の表情を、人間は読みとる能力を持っていますから、ここを突くんだと思ったらぐいぐい入っていきます。
 相手が怖い顔をしたと思ったら引きます。「今のは取り消します」って言うんです。
 そして、毅然とする時は毅然としなければいけません。「それだけは、できません」ってはっきり言うんです。
 謝罪するときは、相手の気持ちの中まで入り込んで謝罪します。
 一番大事なことは「この人に、ここから去らないでほしい。ここにいてほしいんだ」ということを願うことです。
 すると、顔が「自然と温和な顔になって、相手の気持ちまでやわらげる」といいます。最後は、やっぱりこれなんです。そして、相手は満足します。
 苦情の対応の流れは、
 まず非常に面倒なことを言われるので、お客様に心理面について謝罪します。
 解決策を提示しないと相手は黙ってくれません。
 原因を追究し、解決策を内部で検討します。そして対応にあたります。
 説明した中で「問題は、こう直します」と解決方法を伝えます。
 解決方法を了承したならば、改善を実施して、お客様を納得してもらいます。
「私はムダな時間を使って来ているのだ」というお客様の心のトゲまでとるため、
「大変ご足労をかけて大変ムダな時間をおかけしました」
「解決しましたが、お気持ちのほうもお許し願えたでしょうか」
と言います。
 そこまで言って「はい満足しました」と言わせることです。これで99%の解決です。
 クレーマーには、へりくだって、相手の分析に時間をかけざるをえません。
 相手をもちあげて、突っ込んで話をして、癖をすべて覚えます。この人はこれが強いが、これが弱いっていうことを測るんです。
 相手が無理難題を吹っかけた時は黙り考えるふりをします。
 そのかわり、できないことと分かっている時には「それは、うちではできません」と即答してください。
 この2つの間()は非常に大事です。
 苦情の対応は、ともかく「迅速に」ということが大切です。時間をおけばおくほど、相手はイライラします。そして「誠意」をもって対応する。相手の気持ちになるということです。
(関根眞一:1950年埼玉県生まれ、苦情・クレーム対応アドバイザー。百貨店に34年間在職し、お客様相談室長として1,300件以上の苦情に対応した。メデュケーション()代表取締役。新学校保護者関係研究会委員) 


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